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福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話 > ネコ女房 
      10月29日の日本民話 
          
          
         
  ネコ女房 
  沖縄県の民話 → 沖縄県情報 
      
       むかしむかし、沖縄には、八キロメートル以上も松並木(まつなみき)の続く海辺があり、その海辺のほら穴に化けネコが住みついていました。 
   ある時、化けネコが美しい女に化けていたら、一人の男がネコとは思わずに、 
  「わしの女房になってくれ」 
  と、言ったのです。 
   男はなかなかに立派で顔立ちもよく、ネコもこの男が気に入って、さっそく一緒にくらすことになりました。 
   男はとてもやさしく、ネコも負けじと男につくします。 
   やがて子どもが生まれて、何年かたつうちに、二人は三人の子持ちになりました。 
   ネコ女房は正体がばれないように気をつけていましたが、それでもネズミを見かけると、思わずとびつきたくなります。 
   それでネコ女房は、男や子どもたちがいない時に天井裏にのぼって、ネズミをとらえて食べていました。 
   ある日、ネコ女房が天井裏にのぼっていたら、ふいに子どもたちがかえってきました。 
   ネコ女房はあわてて下へおりましたが、口にはまだ、ネズミをくわえたままです。 
  「かあちゃん、どうしたの!」 
   子どもたちはビックリして、顔を見あわせます。 
   ネコ女房はハッとして、ネズミをはなしました。 
  「ネズミなんかくわえて、ネコみたい」 
   子どもたちがそう言うので、ネコ女房は、 
  「ネズミがあんまりうるさいので天井裏へ行ったら、いきなりかあちゃんの口にとびついてきたのよ。いい子だから今日のこと、とうちゃんに言うんじゃないよ」 
   ネコ女房は何とか言いくるめましたが、子どもたちは、まだ信じられないという顔をしていました。 
   夕方になり、男が仕事からもどってくると、子どもたちは母親にかくれて今日の出来事を話しました。 
   それを聞いて、男はビックリ。 
   だからといって、いきなり女房を問いつめるわけにもいかず、しばらくようすを見ることにしました。 
   ようすを見ていると、女房にはおかしなことがあります。 
   だれもいないことがわかると、ゴロゴロとのどを鳴らしたり、時にはネコのように、かまどの上にのぼったりするのです。 
  (もしかして、ネコにとりつかれたのかもしれないぞ) 
   男は心配になって、 
  「かあちゃんは病気かもしれないから、気をつけてやるように」 
  と、子どもたちに言い聞かせた。 
   ところが子どもたちは、それ以来、母親をおびえるようになりました。 
   男は思いきって、女房に別れ話を持ち出すと、 
  「子どもにきらわれてはしかたがないので、別れることにします」 
   女房はそう言って、家を出ていきました。 
  (いったい、どこへ行くのだろう?) 
   男はこっそりと、女房の後をつけました。 
   女房は後ろもふり向かずに、どんどん歩いていって、ほら穴の中に消えました。 
   男がほら穴のようすをさぐっていたら、奥の方から女房の声が聞こえてきて、 
  「どうやら、正体を見破られてしまったらしい。せっかくうまくやっていたのに。いつかこのうらみは、はらしてやる」 
  と、言ったのです。 
   そして、姿の見えない誰かが言いました。 
  「そうは言っても、お前がネコだということが、わかったわけではないだろう」 
  「いや、ネズミをくわえているところを、子どもたちに見られてしまった」 
  「そうか、それなら仕方ない」 
   その話を聞いていた男はビックリ。 
   まさか自分の女房が、ネコだなんて。 
   ほら穴のネコの話しは、まだ続きます。 
  「しかしな、男の命をとるといっても、相手に呪文(じゅもん)をとなえられたらどうする? われらはあの呪文をとなえられると、手出しができなくなるぞ」 
  「大丈夫よ、今の若い人間が、呪文なんて知るわけがない」 
  「まあ、たしかに。知っているとすれば、村一番の年寄りのおばばぐらいだろう」 
   男はそれを聞くと、すぐにほら穴をはなれて、村一番の年寄りのおばばの家に行き、わけを話して、 
  「化けネコを追いはらう呪文を教えてくれ」 
  と、たのみました。 
  「さて、うまく思い出せるかどうか」 
   そう言いながらも、おばばは呪文を思い出してくれました。 
  ♪ネコネコ鳴くな。 
  ♪北風吹けば、南に飛ばされる。 
  ♪南風吹けば、北に飛ばされる。 
  ♪ネコネコ鳴くな。もう鳴くな。 
   男は呪文の言葉をしっかり覚えると、家にもどって行きました。 
   その晩、男が子どもたちを寝かせていたら、表から気味の悪いネコの鳴き声がひびいてきました。 
  「フギャー! フギャー!」 
   男は鳴き声の方に向かって、教えてもらった呪文をとなえました。 
  ♪ネコネコ鳴くな。 
  ♪北風吹けば、南へ飛ばされる。 
  ♪南風吹けば、北に飛ばされる。 
  ♪ネコネコ鳴くな。もう鳴くな。 
   すると、ネコの鳴き声がおさまり、 
  「くやしいー!」 
  と、言う言葉を残して、一匹のネコがたちさっていくのが見えたという事です。 
      おしまい 
         
         
         
        
 
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