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福娘童話集 > きょうの日本民話 > 10月の日本民話 > おばばが消えた 
      10月26日の日本民話 
          
          
         
  おばばが消えた 
  滋賀県の民話 → 滋賀県情報 
      
       むかしむかし、琵琶湖(びわこ)のほとりの家に、もう七十歳をこえているのに、家族も近所の人たちもおどろくほど元気なおばあさんがいました。 
   ある寒い日の夕方、これまで病気一つしたことがなかったのに、このおばあさんはいろりの前にすわっていて、そのまま死んでしまったのです。 
   家の人たちも、近所の人たちもビックリ。 
   けれど、とにかくお葬式(そうしき)の準備を始めなければなりません。 
   お葬式の準備がひとだんらくついたとき、奥の部屋に安置(あんち)してある棺(ひつぎ)が、メリメリと音をたてて畳(たたみ)の上にころがりました。 
   そして死んでいるはずのおばあさんが、白い衣のまま立ちあがると、あたりをにらみまわしたのです。 
  「ばっ、ば、ば、ば・・・」 
   家の中にいた人たちは、言葉にならない声をあげながら、おそろしさのあまりブルブルとふるえていました。 
   その中に母の急死をきいて、お坊さんになっていた息子がいたのです。 
   その息子もビックリしましたが、すぐに大きな声でお経をとなえはじめると、おばあさんはそのまま棺の中へたおれて、また動かなくなりました。 
   さて、次の日の夕方の事です。 
   おばあさんの棺をかついでお寺にむかうとちゅうで、きゅうに雨がふりだしてきました。 
   雨は大雨になり、頭の上でカミナリがとどろきはじめました。 
   お寺まではもうすぐなので、お葬式の行列はそのまま進んでいきました。 
   幸いなことに、まもなく雨はやみましたが、棺がきゅうに軽くなったのです。 
  「なんだなんだ? 棺がきゅうに軽くなったぞ。おい、ちょっとのぞいてみよう」 
   足を止めて棺の中をのぞいてみると、中は空っぽで、おばあさんは消えていました。 
  「そういえば、さっき空から黒い雲がおりてきて、おばばの棺のまわりをとりかこんで稲光がはげしく走った。おばばはあのとき、天へ持っていかれたんだ」 
  と、だれかがいいました。 
   棺をかついでいた人たちも、たしかにそのときから軽くなったと言っていたという事です。 
      おしまい 
         
         
         
        
 
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