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福娘童話集 > きょうの日本民話 > 8月の日本民話 > 白い衣の神さま 
      8月22日の日本民話 
          
          
         
  白い衣の神さま 
  愛知県の民話 → 愛知県情報 
      
       むかしむかし、お祭りがちかづいた神社で、狂言(きょうげん)の舞台(ぶたい)がせまいので舞台を広げる工事をすることになりました。 
   村の人たちがひと月近く手弁当(てべんとう→自分で弁当を用意することで、一般的にボランティア活動をさします)で仕事をつづけ、あとは壁の残りの部分をぬれば工事もおわりというところへ、音吉(おときち)という若者が、おけをかついで水を運んできました。 
   音吉は勢いよく、壁土(かべつち)の中へそのおけの水を入れました。 
   そのとき、近くにいた人が、 
  「おい、そのおけはなんじゃい。しょうべんをいれるおけじゃねえか。そんなきたねえものに水を入れてくるやつがあるか!」 
  と、しかりつけました。 
   とはいっても、水はぜんぶ壁土にそそがれてしまったので、いまさらどうすることもできません。 
  「しょうがねえなあ。しょうべんで壁土をこねたわけではねえから、まあいいか」 
   そういって、こねた土を壁にぬって仕事をおえました。 
   そして村の若者たちが新しくできた舞台で、狂言のけいこをはじめました。 
   ところが夜がふけると、舞台のあちこちにワタのような物がたくさん現れて、フワフワと舞いだしたのです。 
   若者たちは気味がわるくなって役人へとどけにいきましたが、役人が調べてもわかりません。 
  「きっと、キツネかタヌキのイタズラだろう」 
  と、いうことになって、次の日の夜は鉄砲(てっぽう)を持ちこんで、様子をうかがっていました。 
   するととつぜん大きな音がして、火の玉がたくさん舞台の上にころがりだしたのです。 
   狂言のけいこをしていた若者たちはビックリして、舞台から逃げだしました。 
   三日目の夜になると、うらの山から地ひびきのような物音がひびいてきました。 
   そして右の手に榊(さかき→ツバキ科の常緑小高木)の枝、左手にろうそくを持った白い衣を着た神さまのような人が現れて、茶碗ほどもある大きな目玉で、若者たちをにらみつけたのです。 
   ビックリした若者たちは雨戸(あまど)をけやぶって、外へとびだしていきました。 
   ある日、村の人たちの頭に音吉のことがうかびました。 
   きたないおけで運んできた水で壁土をねり、それをぬってしまったために、神さまが怒っているのかもしれません。 
   そして次の日の夕方、神主さんにいのってもらって、狂言の舞台をすっかり清めてもらいました。 
   すると神さまも怒りをおさめてくれたらしく、その夜からなにもおこらなくなりました。 
   村の若者たちも安心して、狂言のけいこにはげんだという事です。 
      おしまい 
         
         
         
        
 
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