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福娘童話集 > きょうの日本民話 > 7月の日本民話 > かえってきたなきがら 
      7月30日の日本民話 
          
          
         
        かえってきたなきがら 
  京都府の民話 → 京都府情報 
      
       むかしむかし、京の都のある屋敷(やしき)に、娘がくらしていました。 
 父と母にかわいがられて育ちましたが、もう、二人とも死んでしまっていません。 
 娘はお嫁にいくこともなく、屋敷をまもっていましたが、ある時、重い病気にかかって死んでしまいました。 
 そこで親戚(しんせき)の人たちがお葬式(そうしき)をすることになって、娘のなきがらをひつぎにおさめて、さみしい野原に運んでいきました。 
 その途中の事、ひつぎをかついでいた人たちが、 
「おや? どうしたんだろう? 急にひつぎがかるくなったぞ。ちょっと、しらべてみよう」 
と、いいだしました。 
 ひつぎをおろしてみると、ふたがほんの少し開いています。 
「あっ!」 
 ふたを開けた人たちは、思わずビックリ。 
 なんと、たしかにおさめたなきがらが、かげもかたちもありません。 
「どこかに、落としてきてしまったのだろうか?」 
「そんなはずはない。もし落とせば、すぐにわかるはずだ」 
「とにかく、道をもどってみよう」 
 親戚の人たちはひきかえしましたが、なきがらを見つける事はできません。 
 すると、一人の男が、 
「もしかしたら、あの屋敷に」 
と、娘の屋敷へ出かけてみました。 
 すると娘のなきがらが、もとのまま座敷のふとんに横たわっていたのです。 
 男はおそろしくなって、親戚の人たちを呼びよせて相談しました。 
「まったく、不思議な事だ。わけがわからん」 
「いずれにしても、明日、あらためて野べ送りをしようではありませんか」 
 こうして野べ送りは、あくる日やりなおされる事になりました。 
 娘のなきがらは、ふたたびひつぎにおさめられ、しっかりとふたがされました。 
「では、そろそろ運びましょう」 
親戚の人たちがひつぎに手をかけようとすると、しっかりふさいだふたが、わずかに開きはじめたではありませんか。 
親戚の人たちがあっけにとられていると、ふたはさらに開いて、娘のなきがらが立ちあがりました。 
「あわわ!」 
「・・・・・・!」 
 親戚の人たちは、腰をぬかして口もきけません。 
 ひつぎをぬけだしたなきがらは、もとの座敷のふとんによこたわりました。 
「不気味な事だが、このままにしておくわけにはいくまい。もう一度、ひつぎにおさめよう」 
 親戚の人たちはおそるおそる、なきがらをかかえあげようとしたのですが、まるで根をはやしたようにビクともしません。 
 そのとき一人のおじいさんが、なきがらの耳もとにはなしかけました。 
「そうか、そうか。この屋敷をはなれたくないというのだな。では、のぞみをかなえて床下にうめてあげよう」 
 おじいさんはみんなをさしずして、床をはがしてもらい、穴をほりました。 
 おじいさんがなきがらをだくと、今度はやすやすとだきあげられ、床下におろされました。 
 親戚の人たちは土をもりあげて、つかをつくると、ホッとした顔でかえっていきました。 
 やがて屋敷はとりこわされましたが、つかだけは、今でも残されているそうです。 
      おしまい 
         
         
         
        
 
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