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 7月12日の小話 
 オオカミのぬか喜び   ある日の事、山から、腹ぺこのオオカミが降りてきました。「何か食う物はないかな? 出来れば、人間の子どもが食いたいが」
 村までやってくると、一軒の家で子どもが泣いています。
 あまりにも泣くので、怒った母親が怒鳴りました。
 「まったく、いつまで泣いているの! あまりいつまでも泣いていると、オオカミに食べさせてしまうよ!」
 それを聞いて、オオカミは喜びました。
 「しめた。ここで待っていれば、子どもが食えるぞ」
 オオカミは物陰に隠れて、母親が子どもを追い出すのを今か今かと待っていました。
 ところが子どもが泣きやむと、母親は優しい声で、
 「ああ、よしよし。お前はいい子だねえ。こんな可愛い子を、オオカミになんかにやってたまるもんか。ああ、よしよし。さ、おっぱいをあげようね」
 それを聞いて、オオカミはがっかりです。
 「ちえっ、ぬか喜びか」
 おしまい
 よく似たお話が、イソップ童話にもあります。
 →  オオカミとおばあさん
   
 
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