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 7月17日の日本民話 2
 
  
 かくれ蓑(みの)
 山口県の民話 → 山口県情報
 
  桃太郎が鬼ヶ島から持ち帰った宝物の中に、かくれ蓑(みの)というものがありました。このかくれ蓑は、見かけはボロボロで汚れていますが、それを着るとたちまち体が消えて見えなくなってしまうという不思議な宝物です。
 
 ある晩の事、一人の泥棒が桃太郎の家へ忍び込み、かくれ蓑を盗み出しました。
 「やった、やった。こいつさえあれば、なんでも盗み放題だぞ」
 その日から泥棒の仕事は、おもしろいほどにはかどります。
 何しろかくれ蓑を着ているおかげで、誰にも見つかることがないのですから。
 
 ところがある日、泥棒の留守に納屋でかくれ蓑を見つけた泥棒のおばあさんは、
 「なんだ、この汚い物を大事にしまって」
 と、かくれ蓑を焼いてしまったのです。
 「ああっ、大切な商売道具が・・・」
 帰ってきた泥棒は、がっかりです。
 それでも、あきらめきれずにいろいろ考えた結果、裸になって体中にのりをつけて、かくれ蓑を焼いた灰の上をごろごろと転がってみました。
 すると灰にも不思議な力が残っていて、体がすーっと見えなくなるではありませんか。
 「よし、これで最後の大仕事をしよう」
 泥棒はそのまま、村一番の長者の屋敷へ忍び込みました。
 屋敷の者たちは、目の前の物が次々に消えてなくなるのでびっくりです。
 「あっ、消えた! ああっ、また消えたぞ!」
 泥棒は思わず、口元を手をさすってクスッと笑いました。
 すると灰の取れた白い歯が、空中に現れたのです。
 「見ろ、歯の化け物だ!」
 屋敷中が、大騒ぎになりました。
 (しまった! はやく逃げねば!)
 泥棒はあわてて逃げ出しましたが、手をさすった時に手のひらの灰も取れたので、手のひらがヒラヒラと逃げて行く様子が誰の目にも明らかとなりました。
 「よし、あれを追うのだ!」
 みんなは手のひらを目印に、どこまでも追ってきます。
 「はあ、はあ、はあ。何てしつこい奴らだ」
 泥棒は逃げて逃げて、やがて全身に汗をかきました。
 すると汗に体中の灰が落ちてしまい、盗人はすっ裸のみじめな姿で捕まったということです。
 おしまい         
 
 
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