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福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 3月の日本昔話 > 空き家でおどるネコ 
      3月9日の日本の昔話 
          
          
         
  空き家でおどるネコ 
      
       むかしむかし、ある家に一匹のネコが飼われていました。 
   みんなからかわいがられ、まるで人間みたいにいばっていましたが、年をとってヒゲは白くなり、一日中いねむりばかりしています。 
   ところが、いつのころからか、夜になると家をぬけだし、朝までもどってこないことが多くなりました。 
  (はて、いったい、どこへ行くのだろう?) 
   ふしぎに思ったおやじさんが、ある晩、こっそりネコの後をつけてみました。 
   そんなこととは知らないネコは、後をふり向きもせず、ドンドン歩いていき、村はずれの一軒家へ入っていきました。 
   その家は、ずっと前から空き家になっていて、手入れをする者もいないため、まるでお化け屋敷のようです。 
  (はて、こんな家にいったい、なんの用があるのか) 
   おやじさんが、破れたしょうじの穴から中をのぞいてみると、明かりもないのに、部屋の中がハッキリと見えます。 
   壁には古蓑(ふるみの→わらなどをあんでつくった雨カッパ)や古笠(ふるがさ→雨をさけるためのぼうし)がかけてあり、ほころびたたたみの上には、古ザルや茶がまや、お酒を入れるとっくりがころがっています。 
  と、ふいにどこからともなく、にぎやかな三味線(しゃみせん→詳細)の音が聞こえてきました。 
   そのとたん、古蓑や古笠が、ひとりでに壁からはなれて、ピョンピョンとおどりはじめたのです。 
   そればかりか、古ザルや茶がまやとっくりまでが、フワリと浮きあがり、三味線の音にあわせておどります。 
   おやじさんはビックリして、 
  (おらの家のネコはどこへ行った?) 
  と、目でさがしてみたら、なんと古だなの上にいて、足をあげたりさげたり。 
   そのうちに、大きな声で、 
  ♪古みの、古がさ、よいこらしょ。 
  ♪古ザル、茶がまに、とっくりこ。 
  ♪それ、スチャラカ、チャンチャン。 
  と、歌いだしました。 
   その、にぎやかで楽しいこと。 
   おやじさんも、ついにがまんできなくなり、 
  ♪古みの、古がさ、よいこらしょ。 
  ♪古ザル、茶がまに、とっくりこ。 
  ♪それ、スチャラカ、チャンチャン。 
  と、歌いながら、その部屋に入っていき、そこに落ちていたしゃもじを持って踊りはじめました。 
   すると、古だなの上にいたネコが、ビックリした顔でとびおり、外へとび出していきます。 
   同時に道具たちも踊りをやめ、見る見る部屋の中が暗くなりました。 
   おやじさんは急にこわくなり、しゃもじを持ったまま外へ出て、そのまま後も見ずにかけだしました。 
   無事に家へもどって、ネコが帰るのを、いまかいまかと待っていましたが、それっきりネコは帰ってこなかったそうです。 
      おしまい 
         
         
         
        
 
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