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      3月27日の日本民話 
        
        
       
早業競べ 
熊本県の民話 → 熊本県情報 
       むかしむかし、長者(ちょうじゃ)が、《日本一仕事の早い者をやとう》と、お触(ふ)れを出しました。 
         すると、三人の男たちが集まって来ました。 
        「では、お前たちの腕前を見せてもらおう」 
         長者が言うと、最初の一人が進み出ました。 
        「では、わたしから」  
         最初の一人は、十本のウメの木からいっぺんにウメの実をたたき落として、それが地面に落ちる前に全部受け取ってしまったのです。 
        「これは見事、見事じゃ」 
         長者が喜んでいると、次の男が進み出ました。 
        「いやいや、それくらいのことでおどろいていてはいけません。だいいち、ウメの実の雄梅(おうめ)と雌梅(めうめ)とをより分けていませんでした」 
        「ほう、ウメの実に雄(おす)と雌(めす)があるとは知らなかった。して、お主は、どういう早業を見せてくれるのか?」 
         すると、二番目の男は、 
        「ノミを一升(いっしょう)ばかり集めて下され」 
        と、頼みました。  
         長者は大勢の村人に命令して、一升(いっしょう)ます一杯のノミを集めさせました。 
         そして、 
        「さあ、これをどうしてくれんじゃ?」 
        と、聞くと、二番目の男はいきなり一升ますをひっくり返しました。 
         さあ大変です。 
         ノミはいっせいに飛びはねながら、逃げていきます。 
        「ご心配なく」 
         二番目の男は、近くにいた女の人の長い髪の毛を二、三本抜くと、とびはねるノミを片っぱしからとらえて、髪の毛で一匹、一匹の鼻ぐりに通して、ノミの輪を作ってしまったのです。 
         あまりの早業に、長者はビックリです。 
        「こりゃたまげたわい」 
         三人目の男がこの様子を見て、長者に言いました。 
        「いやいや、これくらいでおどろいていてはいけません。今のはだいいち、ノミのオスとメスとをより分けていませんでした」 
        「ほう、それならお主は、何を見せてくれるのじゃ?」 
         ちょうどそのとき、長者の屋敷(やしき)の屋根普請(やねぶしん)に来ていた者が一人、高い屋根から足をふみすべらせて、下へ落ちてしまったのです。  
         それを見た三人目の男は、さっと裏山にかけ込んで竹をきり、その竹で大きなカゴを作り、次にウマ小屋に飛び込んでワラたばを取って来て、大きなカゴに敷き詰めると、屋根から落ちて来た男を大きなカゴで、見事受け止めたのです。 
        「こいつはたまげた。人が落ちてくる間に、ワラたばをつめたカゴを作って人を受け止めるとは」 
         三人が三人とも、すご腕の早業だったので、長者はやとうのをやめて、三人を客人(きゃくじん)として大切にもてなしたという事です。 
      おしまい 
                  
 
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