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        福娘童話集 > お薬童話 > 肌荒れをやわらげる お薬童話 
         
        
       
八人浦島物語 
富山県の民話 → 富山県情報 
      
       むかしむかし、黒部谷(くろべだに)の山里に、とても碁(ご)のすきな八人の男がいて、毎日ひまさえあればパチリパチリと、碁石(ごいし)を打っては楽しんでいました。 
 ある日のこと、いつものように碁をしていると、一人の老人がやってきて、 
「わしも碁がすきでな。一つ打たせてはくださらないか?」 
と、頼んだので、 
「ああ、いいですよ」 
と、仲間に入れると、これがなかなかの腕前で、一番強いといわれる男とやっても、まったくひけをとりません。 
 老人はそれから毎日くるようになり、みんなと碁を楽しんでいました。 
 一年ほどたったころ、八人の男たちは老人の家にまねかれました。 
 老人の案内で谷をすぎ、崖(がけ)や淵(ふち)を渡っていくと大滝(おおだき)の前に出ました。 
「この滝の中に隠れ道がある。わしに続いて滝をくぐってくだされ」 
 老人がこういってヒラリと滝をくぐったので、村人たちも続いてくぐり抜けると、岩の洞穴(どうくつ)がありました。 
 その中を進んでいくと、りっぱな黒門(くろもん)に囲まれたご殿(てん)が見えました。 
 それが老人の家で、男たちは人びとに出迎えられて奥座敷(おくざしき)に通されると、たいへんなごちそうのもてなしを受け、そのあと碁をして遊びました。 
 夜は夜で、絵のように美しい娘たちが三味線(しゃみせん)、胡弓(こきゅう)、尺八(しゃくはち)を伴奏(ばんそう)にしておどり、天にものぼる心地です。 
 そのような日を過ごして二日後、村人たちは家に帰ることにしました。 
 老人は、名残りをおしみ、 
「それでは、世にもめずらしいごちそうをさし上げましょう」 
と、いって、頭と顔が人間で、胴がタイのような人魚の料理を出しました。 
 気味悪く思った村人たちは、それを食べるふりをして紙につつみ、もときた道をたどって滝の外に出ると、紙づつみの魚を川にすてました。 
 さて村に帰ると、たった二日のはずが、なんと二年もの月日がたっていたのです。 
 ところで、八人の中でただ一人、紙づつみを持ち帰った男がいました。 
 その家の娘がそれと知らずに紙づつみの魚を食べたところ、何年たっても若わかしく、なんと三百歳まで長生きしたという事です。 
 それはきっと、不老不死の薬と言われる、人魚の肉を食べたためでしょう。 
 それからあの老人は、二度と村には姿を見せませんでした。 
      おしまい 
          
         
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