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        福娘童話集 > お薬童話 > 疲労を回復する お薬童話 
         
        
       
シラミの質入れ 
山形県の民話 → 山形県情報 
      
       むかしむかし、米沢(よねざわ→山形県南部の市)の近くの村に、佐兵(さへい)という、冗談(じょうだん)好きな男がいました。 
 佐兵はびんぼうで着ているきものはボロばかり、そしてそのきものには、いつもシラミがたかっていました。 
 ある時、お金が必要になったので、家の中で一番上等のきものを質屋(しちや)へ持っていきました。 
 すると、質屋の番頭(ばんとう)が、 
「おい、佐兵よ。お前のきものには、シラミもいっぱいたかっているぞ」 
「うん。たしかにたかっているな。だが、お前さんの店では、《何でもお受けします》と書いてあるぞ」 
「まあ、それはそうだが」 
「そうだろう。それじゃあ、きものと一緒にシラミもあずかったと、質札(しちふだ→あずかったことを示す紙)にかいてくれよ」 
「それはいいが、シラミの数は?」 
「そうだな。五升(約9リットル)のシラミあずかったと、かいてくれ」 
「へいへい」 
 番頭がかいてわたすと、佐兵はだまってかえりました。 
 そしてそれからいく日もしないで、佐兵はお金を持ってきものを引きとりにきました。 
「たしかにきものは受け取ったが、でも、返してもらうものがまだたりねえぞ」 
「なにがたりねって?」 
「シラミ五升だ。質札にちゃんとかいてあるものだろう。そいつを返してもらわねえとな」 
 シラミの事など冗談だと思っていたのですが、たしかに質札にかいて渡したのですから、返せと言われれば返さなくてはなりません。 
 でもシラミを五升なんて、どこにもありません。 
 番頭は、頭をかきながら、 
「まったく、佐兵にはかなわんな」 
と、シラミの代わりに酒代をやって、かんベんしてもらったということです。 
      おしまい 
          
         
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