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        福娘童話集 > お薬童話 > 肌荒れをやわらげる お薬童話 
         
        
       
美しい山姫 
岡山県の民話 → 岡山県情報 
      
       むかしむかし、備前の国(びぜんのくに→岡山県)に一人の猟師がいました。 
 ある日の事、けものを追うのに夢中で、あちこち走りまわっているうちに、どんどん山奥へ入り込んでしまい、道に迷ってしまいました。 
「さて、これはこまった事になったぞ。この山は夜になると化け物が出ると聞くからな」 
 猟師が草木をわけて進んでいくと、ふいにうしろで人の気配がしました。 
 ふり返ってみると、なんと一人の娘が立っていて、ニッコリとほほえんでいるではありませんか。 
 年は二十才ほど、まるで絵からぬけ出たような美人で、顔はすきとおるように白く、肩までたらした黒髪はつややかで、花がらの着物もめずらしく、あふれるような色気があります。 
 いくらなんでも、こんな山奥にこんな娘がいるはずありません。 
(もしかして、人に姿を変えた化け物では?) 
 男はすばやく鉄砲を持ちなおすと、娘の胸をめがけて玉をうち込みました。 
 ズドーン! 
 ところが娘は、その玉をひょいと右手で受けとめると、牡丹(ぼたん)の花のような口びるにくわえて、ニッコリほほえむのです。 
(まぎれもなく、こいつは化け物だ) 
 男はあわてて鉄砲に玉を込めて、二発目を打ち込みました。 
 ズドーン! 
 それでも娘は顔色一つ変えず、今度は左手でその玉を受けとめると、いかにも楽しそうに笑うのです。 
 さすがの男もこわくなり、その場に鉄砲を投げすててかけ出しました。 
 やっとの事で山から出ることができましたが、思い出すだけでも、体がブルブルとふるえます。 
 その夜、物知りで有名な近所の老人のところへ行って、今日の出来事を話しました。 
「キツネやタヌキなら、もっと悪さをするはずだし、山姥(やまんば)が化けたにしては、あまりにもきれいすぎる」 
 すると老人は、男に言いました。 
「それは山姫(やまひめ)というものじゃ。めったなことではあえぬ妖怪(ようかい)だが、それはそれは美しい姿だというぞ。べつに悪さをするわけではなく、おとなしくしていれば宝物をくれるという話じゃ」 
「なんと。そうとわかっていれば、鉄砲などうつのではなかった。まことに残念なことをした」 
 男はひどくくやしがり、それから何度も同じ山へ出かけて見ましたが、ついに山姫にあうことは出来ませんでした。 
      おしまい 
          
         
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