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 10月11日の世界の昔話  
 おしゃべりな王さま
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 投稿者 「眠りのねこカフェ」
  むかしむかし、インドに、とてもおしゃべりな王さまがいました。王さまは朝から晩までおしゃべりばかりしていて、王さまの仕事を何もしません。
 こまった家来たちは、いつも思っていました。
 「なにか、王さまにおしゃべりをやめてもらう方法はないだろうか?」
 
 そのころヒマラヤの山奥の池に、一匹のカメが住んでいました。
 そこへ二羽の白鳥が飛んできて、カメと友だちになりました。
 「カメさん、わたしたちの家へ遊びに来ませんか? わたしたちの家は金色のほら穴で、とてもすてきなところですよ」
 「わあ、それは行きたいなあ。・・・でも、ぼくは空を飛ぶ事が出来ないし」
 「大丈夫よ。わたしたちが、連れて行ってあげるから」
 「ありがとう。それでは、ぜひ連れて行って」
 そこで二羽の白鳥は一本の棒きれを探してくると、カメに言いました。
 「さあ、この棒きれをしっかりくわえていてください。どんな事があっても、けっして口を開いてはいけませんよ」
 「わかった。ぜったいに口を開かないよ」
 かめが棒きれをくわえると、二羽の白鳥はその両端をくわえて空へと飛びたちました。
 
 (わあ、なんて気持ちがいいんだ)
 カメは風をきって、ぐんぐん空をのぼっていきます。
 ふと下を見ると、人間の子どもたちが遊んでいました。
 子どもたちは空を飛んでいるカメを見つけると、口々に言いました。
 「あっ、白鳥が、カメを下げて飛んでいるよ!」
 「本当だ! カメのくせに、なまいきだ!」
 「カメなんて、地面をはっていればいいんだ」
 それを聞いて、カメは腹を立てました。
 そして白鳥との約束をわすれて、思わず口を開いたのです。
 「うるさいやい! ・・・あっ」
 そのとたん、くわえていた棒きれから体がはなれたカメは、葉っぱのようにくるくるとまいながら下へ落ちていきました。
 ドッシーーン!
 カメの落ちたところは、ちょうど王さまのお城の庭でした。
 「なんだ! カメが空から落ちてきたぞ!」
 「かわいそうに、こうらが割れて死んでしまった」
 お城は、大変なさわぎとなりました。
 王さまもそのさわぎを聞いて、庭へ出てきました。
 「しかし、どうしてカメが空から落ちてきたのだ?」
 王さまがたずねると、カメが落ちてきた理由を知っていたえらいお坊さんが答えました。
 「いいですか、王さま。
 このカメは、口をきいてはいけない時におしゃべりをしたから、こんな事になったのです。
 これは、人間でもおなじ事。
 やたらとおしゃべりする人は、みんなこのカメのようになってしまいます」
 「・・・・・・」
 
 それからというもの、王さまはよけいなおしゃべりをしなくなったそうです。
 おしまい   
 
 
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