| 
      | 
     
福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 8月の世界昔話 > ネズミ取りとネズミの結婚 
      8月14日の世界の昔話 
          
          
         
  ネズミ取りとネズミの結婚 
  ウルグアイの昔話 → ウルグアイの国情報 
      
       むかしむかし、ネズミをつかまえる道具の『ネズミ取り』が銅貨をひろいました。 
   ネズミ取りはお金持になったので、結婚しようと思いました。 
   そこで、まいにちまいにち、おむこさんをさがして歩きました。 
   ようやくネズミを見つけて、ネズミ取りは結婚しました。 
   ネズミとネズミ取りは、とてもしあわせでした。 
   あるとき、ネズミとネズミ取りは、友だちにまねかれてでかけました。 
   とちゅうまでくると、ネズミはおかみさんのネズミ取りが、だいじにしまっておいたチーズのことを思いだしました。 
   すると、そのチーズをたべたくてたまらなくなりました。 
   ネズミは、 
  「ああ、こまった。ハンカチをわすれちゃった。うちへいってとってくるから、おまえはさきにいっていておくれ」 
  と、いって、一人でうちへもどりました。 
   チーズのかけらは、台所のてんじょうにぶらさがっていました。 
   ネズミは壁をのぼっていって、そこからぶらさがっているチーズめがけて、エイッと、とびつきました。 
   ところでチーズの下には、大きなおナベが火にかかっていました。 
   おナベの中では、マメがおいしそうにグツグツとにえたっています。 
   ネズミはチーズにとびつくことができなかったので、そのおナベの中におっこちて、あっというまに死んでしまいました。 
   ネズミ取りは友だちの家で、だんなさんのネズミがくるのを待っていました。 
   けれども、いつまで待ってもこないので、うちへもどりました。 
   ネズミ取りは、うちの中をすみからすみまでさがしましたが、ネズミのすがたはどこにも見えません。 
   さんざんさがしたあげく、おナベの中で死んでいるのを見つけたのです。 
   ネズミ取りは、かなしくてなきだしました。 
   そのとき、戸口の『とびら』が、ネズミ取りにたずねました。 
  「ネズミ取りさん、ネズミ取りさん。どうして、そんなに悲しんでいるのです?」 
   ネズミ取りは、だんなさんのネズミが死んだことをはなしました。 
   すると『とびら』も、かわいそうに思って、開いたり閉じたりして、ギーギーとなきました。 
   庭にたっていたダイダイ(→ミカン科の常緑低木)の木が、それを見てふしぎに思いました。 
  「とびらさん、とびらさん。どうしてそんなにおちつかないの?」 
   たずねられたとびらは、ダイダイに、ネズミの話を聞かせました。 
   ダイダイは、たいそう悲しんで、 
  「わたしは、このからだから、葉っぱを一枚のこらずおとしてしまいましょう」 
  と、いって、からだをブルブルとふるわせました。 
   牧場で草をたべていたメスウシが、はだかになったダイダイの木を見ました。 
  「ダイダイさん、ダイダイさん。どうして、そんなすがたになったの?」 
   たずねられたダイダイは、ネズミ取りとネズミの話を聞かせました。 
   メスウシは、とてもきのどくに思って、 
  「まあ、なんて悲しいお話でしょう。わたしもやせて、おちちをだすのをやめにしますわ」 
  と、いって、草をたべるのをやめてしまいました。 
   ある日、メスウシはいずみへ、水を飲みにいきました。 
   いずみは、メスウシがやせてしまったのを見て、 
  「メスウシさん、メスウシさん、どうしてそんなにやせたのですか?」 
  と、聞きました。 
   いずみも、メスウシの話を聞くと、 
  「なんて気のどくな話でしょう。わたしも、水をからしてしまいましょう」 
  と、いって、水がわきでるのをとめてしまいました。 
   やがて、一人の男の子が手おけを持って水をくみにきました。 
   いずみに、水がひとしずくもないのを見ると、子どもはいずみにたずねました。 
  「どうして、水がないの?」 
   いずみは子どもに、悲しんでいるわけを話しました。 
   すると、 
  「ほんとうに悲しい話だな。ぼくも、おけをこわしてしまおう」 
  と、いって、子どもはおけをこなごなにくだいてしまいました。 
   そして、水を持たずにうちへ帰りました。 
   子どもが帰ると、その主人がたずねました。 
  「どうして、水をくんでこなかったのだ?」 
   子どもは、いずみに聞いたとおりを話しました。 
   ところが主人は、ちっとも悲しみません。 
   それどころか子どもをおさえつけると、ありったけの力をだして、ビシバシとおしりをたたきました。 
   するといままで、とびらや、ダイダイや、メスウシや、いずみや、子どもたちにかけられていた悲しみの魔法の力が、あっというまにとけてしまいました。 
   ネズミ取りは、もうだれにもなぐさめてもらえなくなりました。 
   ネズミ取りは、なんにもたべないでないてばかりいるうちに、とうとう死んでしまいました。 
      おしまい 
         
         
         
        
 
     | 
      | 
     |