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      8月26日の世界の昔話 
          
          
         
のんきな旅人 
フランスの昔話 → フランスの情報 
      
       むかしむかし、あるところに、とてものんきな人がいました。 
         
 その人が一人旅に出かけましたが、歩いていくうちに日がくれてきたので、一軒の宿屋を見つけて入っていきました。 
「こんばんは、泊めておくれよ」 
「あいにく、空いた部屋がありません。ほかの方と二人一緒でもいいですか?」 
「別にいいよ」 
 宿屋の主人に案内されて入った部屋にはベッドが二つあり、先にきていたお客はもうねむっていました。 
 そのお客は顔中がまっ黒で、ヒゲがモジャモジャです。 
「あははは。ひげだらけで、まるでクマみたいだ」 
 のんき屋はねている客を見て笑うと、宿屋の主人に、 
「明日の朝は、七時に起こしておくれ」 
と、言って、ベッドに入りました。 
 
 夜もふけたころ、イタズラ好きの宿の主人が、そっと部屋に入ってきました。 
「人の顔を『ひげだらけのクマみたいだ』なんていう人は、自分もひげだらけになるがいい」 
 主人は炭で、のんき屋さんの顔をまっ黒にぬりました。 
 
 さてあくる朝、宿の主人が部屋の外からのんき屋さんをよびました。 
「七時です。お客さん、起きてください」 
「うっ、うーーん」 
 目を覚ましたのんき屋さんはベッドをおりると、服を着替えて部屋のすみのカガミを見ました。 
 するとそこには、まっ黒なひげだらけの顔がうつっています。 
 それが自分の顔だとは気がつかないのんき屋さんは、 
「あれ?、こいつは誰だろう? ・・・ああ、わかったぞ。宿屋の主人は、わしを起こすのを間違えて、ひげさんの方を起こしたんだ。じゃあ、わしはまだねむっていていいんだ」 
 そうつぶやいて服を脱ぐと、またベッドにもぐり込んでねてしまいました。 
      おしまい 
         
         
         
        
 
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