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福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 8月の世界昔話 > ハチミツの好きなキツネ 
      8月4日の世界の昔話 
          
          
         
  ハチミツの好きなキツネ 
  ウクライナの昔話 → ウクライナの国情報 
      
       むかしむかし、あるところに、どんなすばらしいごちそうよりも、ハチミツの大好きなキツネがいました。 
   ところが、ほかのごちそうならいつでもたべられますが、ハチミツにはなかなかありつけません。 
   キツネはハチミツのありそうな場所を、いっしょうけんめい考えてみました。 
  (そうだわ。ミツバチの巣箱(すばこ)を、のぞきにいってみよう。あそこなら、ハチミツがたっぷりなめられそうだわ) 
   キツネはさっそく村へでかけていって、お百姓のかっているミツバチの巣箱のそばへしのびよりました。 
   そして、そろりそろりと手をのばしかけたとたん、ミツバチたちに見つかってしまいました。 
   おこったミツバチたちが、ブンブンうなりながら、キツネめがけてとびかかっていきました。 
   メチャクチャにさされたキツネは、やっとのことでにげだして、どうにか命だけはたすかりました。 
   こんなにひどい目にあったのに、キツネはどうしても、ハチミツのことが忘れられません。 
   そのうちに、いいことを思いつきました。 
  (そうだ。クマさんといっしょにくらせばいいわ。クマさんもハチミツが好きだから、きっとどっさり持っているにちがいないもの) 
   キツネはさっそく、クマの家をたずねていきました。 
  「クマさん、クマさん。わたしといっしょにくらしませんか。きっと、いいおくさんになりますから」 
  「ああ、いいとも」 
   クマは、喜んでいいました。 
   それからキツネとクマは、いっしょにくらしはじめました。 
   クマはまいにち森へ狩りにいって、おいしいごちそうをキツネにたべさせてくれました。 
   それでもキツネは、朝から晩までハチミツのことばかり考えていました。 
   そしてある日のこと、クマにこういってねだりました。 
  「ハチミツをとってきてくださらない。なんだか、とってもあまいものがほしくなったの」 
   クマは村へでかけていって、大きな巣箱を二つも、かついで帰ってきました。 
  「さあ、とってきてやったよ。ひと箱だけたべて、もうひとつは冬のためにとっておこう」 
   クマはそういって、巣箱のひとつを屋根うらにかくしました。 
   もうひとつの巣箱のハチミツは、またたくまになくなってしまいました。 
   キツネはもっとなめたくて、がまんができなくなりました。 
   でも、うまくクマをだまさなければ、屋根うらにしのびこめません。 
   そこでキツネは、クマにわからないように、トントントンと、しっぽで壁をたたきました。 
   その音に気づいたクマが、いいました。 
  「だれだね。戸をたたいているのは?」 
  「ああ、おとなりさんが、わたしをお客によんでくれたんですよ。ぼうやが生まれたお祝いにね」 
  「そうか。ではいっておいで。わしは昼ねでもしていよう」 
   キツネはそとにでていくふりをして、屋根うらにしのびこみました。 
   そして、たっぷりとハチミツをなめました。 
   それから知らん顔をして、帰ってきました。 
  「赤ん坊の名は、なんてつけたんだね?」 
  と、クマが聞きました。 
  「『たべはじめ』というのよ」 
  と、キツネはこたえました。 
  「『たべはじめ』? なんとも、おかしな名まえだなあ」 
  「あら。ちっともおかしくないわ。いい名まえじゃありませんか」 
   あくる日、キツネはまたしっぽで壁をたたきました。 
  「だれだね。戸をたたいているのは?」 
  「べつのおとなりさんが、お客によんでくれたんですよ。女の子が生まれたお祝いにね」 
  「いっておいで。わしは、昼ねでもするとしよう」 
   キツネはまた、屋根うらへはいりこんでハチミツをなめました。 
   もう巣箱の中には、ちょっぴりのハチミツがのこっているだけです。 
   キツネが帰ると、クマは聞きました。 
  「女の子に、どんな名前がついたかね」 
  「『たべてるとちゅう』と、いうのよ」 
  「『たべてるとちゅう』? なんとまあ、おかしな名まえだなあ」 
  「あら、おかしくなんかありませんよ。とてもいい名まえですよ」 
  「そうかねえ」 
   つぎの日、キツネはまたまた、しっぽで壁をたたきました。 
  「また、戸をたたいているぞ」 
  「また、べつのおとなりさんがお客によんでくれたんですよ。ぼうやが生まれたお祝いにね」 
  「なんと。いったいこのごろどうしたんだ? まいにちまいにち、お客にばかりよばれて」 
  「近所の人に、わたしが好かれているからですよ」 
  「そうか。まあいっておいで。わしは昼ねをするとしよう」 
   屋根うらへしのびこんだキツネは、ハチミツをぜんぶなめてしまいました。 
   それでもまだたりないで、巣箱をひっくりかえすと、すみからすみまできれいになめまわしました。 
   キツネが帰ってくると、クマは聞きました。 
  「こんどのあかんぼうは、なんて名まえがついたかね」 
  「『ひっくりかえして、なめちゃった』ですよ」 
  「なんだって? そんな名まえが、あってたまるものか」 
  「ありますとも」 
  「そうかねえ」 
   いくにちかたって、クマはきゅうにハチミツがほしくなりました。 
   そして屋根うらへいってみると、どうでしょう。 
   巣箱は、からっぽです。 
  「キツネめ、おまえだな、ハチミツをなめたのは。もうかんべんできん。おまえなんかくいころしてやるぞ!」 
   クマはカンカンにおこって追いかけましたが、キツネはサッサとにげてしまいました。 
      おしまい 
         
         
         
        
 
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