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 6月30日の日本民話 2
 
  
 桶屋の夢
 宮城県の民話→ 宮城県情報
  むかしむかし、ある村に桶屋さんがいました。桶屋さんは貧乏でしたが、そんな事は気にせずに、いつも歌を口ずさみながら桶を作っていました。
 ある日の事、桶屋さんは村の大きな酒屋さんから、仕事を頼まれました。
 酒樽のまわりを止めてあるたがが古くなったので、新しいのに変えてほしいというのです。
 桶屋さんは、久しぶりの大仕事に大喜びです。
 「金づち、木づち、のみに、かんな。それからそれから、あれとこれを持って・・・」
 桶屋さんは仕事道具を持って、大はりきりで出かけて行きました。
 さて、酒屋さんの酒蔵には、古い桶が数えきれないほど並んでいます。
 桶屋さんは、
 「はい次、ほい終わり、はい次、ほい終わり」
 と、古いたがをはずして新しいのに代えていきました。
 そして、一番最後のひとつを見てびっくり。
 その樽はとても大きな大桶で、桶屋さんも今まで見たことありません。
 桶屋さんははしごに登って、古いたがにのみをあてて、
 「それ、はずれろ」
 と、思いっきり金づちでたたきました。
 そのとたん、
 バーン!
 いきなりたががはずれて、その拍子にたがは桶屋さんをひっかけて、ものすごい力ではじいたのです。
 ビューン!
 「うわぁ、助けてくれー!」
 はじかれた桶屋さんは、勢いよく空へ飛ばされました。
 そして桶屋さんは棒を見つけたので、必死でつかまりました。
 「やれやれ」
 と、思ったその場所は、なんと五重の塔のてっぺんの棒だったのです。
 「うわーん、怖いよー、おろしてくれよー」
 さて、それを見つけたのは、雲の上のかみなりさまです。
 「ありゃ? なんでここにいるんだ。おめえは、人間だろ」
 「へえ、人間の桶屋です」
 「桶屋か、そりゃいい。うちへ来い」
 桶屋さんはかみなりさまの家へ連れて行かれて、こわれた樽やら板のはずれた桶を山ほど目の前につまれました。
 「とほほ。なんでこんな目に」
 でも、雲の上ではどうしようもありません。
 桶屋さんは、せっせと仕事を始めました。
 そうして四、五日たつと、かみなりさまが水がめと笹の葉を持って来ました。
 「おい、桶屋。今度は水まきだ。俺さまが太鼓を景気よくたたくから、人間の世界に水をまいてやれ」
 そういってかみなりさまは、太鼓をたたき始めました。
 桶屋さんは、言われたとおりに雲の上から水まきを始めます。
 するとその水は雨になって、地上に落ちて行きました。
 ドンドコ、ザーザー。
 地上は大雨です。
 雲の上から見ていると、人間たちがあわてて畑から飛び出していったり、洗たく物を取りこんだりと大騒ぎ。
 「こりゃ、おもしろい。こりゃ、愉快だ」
 桶屋さんは楽しくて調子に乗り、雲の上を走りまわって水まきをしました。
 と、そのとき
 「うわっ」
 と、バランスを崩したと思ったとたん、桶屋さんはまっさかさまに雲から落ちてしまいました。
 あまり走りまわりすぎて、はじっこの雲のうすいところに来たのに気がつかなかったのです。
 「うひゃーーー!」
 ドボーン!。
 落ちて落ちて、落ちたところは沼でした。
 桶屋さんは大暴れして、ハッと気がつきました。
 気がつくと、そこはふとんの中。
 おまけに、どうも冷たい思ったら、桶屋さんはおねしょをしていたのです。
 おしまい   
 
 
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