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 3月23日の日本民話 2
 
  
 ウナギ釣り
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  むかしむかし、川の中に腰まで入って、ウナギ釣りをしている人がいました。エサのミミズをつけた釣り針を投げ込んで、ウナギのかかるのをジッと待っています。
 でも、三十分たっても一時間たっても、ウナギは釣れそうにありません。
 するとそれをさっきからジッと見ていた人が、イライラして言いました。
 「なあ、お前さん。一度、糸を引き上げてみてはどうだね。もしかするとエサがなくなっているかもしれないよ」
 それを聞いたウナギ釣りの人は、
 (ふん、素人が何を言いやがる。おれはこの方法で何十年もウナギ釣りをしているんだ。お前なんぞにウナギの釣り方がわかってたまるもんか)
 と、心の中で思いましたが、でももしかすると、本当にミミズがなくなっているかもしれません。
 そこで思い切って、釣り針を引き上げてみました。
 するとミミズは、ちゃんと釣り針についたままです。
 「何だ、まるで食ってないじゃないか」
 ウナギ釣りをしている人ではなく、見ている人がガッカリして言いました。
 (余計なお世話だ。見るなら黙って見ていろ)
 ウナギ釣りをしている人は少し腹を立てましたが、もう一度、釣り針を川の中に投げ込みました。
 ところがいくら待っても、ウナギがかかる様子はありません。
 それでもジッと我慢して、ウナギがかかるのを待っていました。
 すると、岸の上の人が我慢出来ずに言いました。
 「お前さんは、よっぽど暇なんだね。いつ釣れるか分からないウナギを、ジッと待っているなんて。本当によくもまあ、あきずに立っていられるもんだ」
 それを聞いたウナギ釣りの人は腹を立てて、岸の上の人に大声で言いました。
 「そっちこそ、よっぽど暇なんだな。人がウナギを釣り上げるのを、ジッと待っているなんて。本当によくもまあ、あきずに立っていられるもんだ」
 そう言われて岸の上の人は、ハッと気がつきました。
 ウナギ釣りに気を取られて、大事な仕事に行くのをすっかり忘れていたのです。
 岸の上の人は大慌てで荷物をかつぎなおすと、走って仕事に出かけました。
 おしまい   
 
 
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