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 3月23日の小話
 
 やぶ先生のぐち   やぶ先生が薬の調合を間違えて、あるお店の番頭(ばんとう→従業員のリーダー)さんを死なせてしまいました。「この人殺しめ! 医者のくせに薬を間違えるとはどういう事だ! お上(おかみ→お役所)に訴えてやるから、覚悟しろ!」
 お店の主人に怒鳴られたやぶ先生は、まっ青な顔になって泣いて謝りました。
 「どんなつぐないでもします。ですからどうぞ、それだけはお許しを・・・」
 そしてやっと許してもらいましたが、やぶ医者は責任を取って、お葬式(そうしき)の準備(じゅんび)をしなければなりません。
 まずは、番頭さんを寺まで運んで行くのですが、人をやとって運ぶお金がないので、家から女房と息子を連れて来て二人にかつがせて運ばせました。
 すっかりしょげ返ったやぶ先生が、弱々しい声で言いました。
 「ああ、こんな事になるのなら、医者などにならなければよかった。・・・まったく医者ほど、損な商売はないわ」
 するとそれを聞いた女房も、
 「本当ですよ。お前さまが下手くそなばっかりに、こんなに重い死人まで運ぶはめになって」
 と、ぶつぶつ文句を言い出しました。
 そして後ろでかついでいた息子も、ヨタヨタと足をふらつかせながら言いました。
 「父上、今度から診る(みる→診察すること)病人は、やせた人だけにしてくださいね」
 ♪ちゃんちゃん(おしまい)
  
 
 
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