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 2月25日の日本民話 2
 
  
 大平長者
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  むかしむかし、田辺(たなべ)に佐竹某という大金持ちがすんでいました。この男は、大平の高台に立派な別荘をたてて、ぜいたくな暮らしをしていたので、村の人たちは『大平長者』と呼んでいました。
 長者は毎晩、庭に定紋(しょうもん)を染め抜いた、ちりめんの幕をはり、黄金の太鼓を打ちならすと、山海の珍味を食べて酒を飲んでいました。
 ある夏の事、庭に出てみると、松の木にツルが巣をつくっています。
 長者は、これはめでたいと喜んでいましたが、そのうちにツルの肉を食べてみたいと思うようになりました。
 けれども、ツルを殺すのは御法度(ごはっと)になっています。
 長者は何とかして、あのツルの肉を食べたいと笛日毎日思い続けていました。
 ある日、長者が巣の中をひょいとのぞいてみると、ツルが卵をうんで温めています。
 長者は、
 「ツルを食べる事は御法度だが、卵なら取ってもよかろう」
 と、その晩にこっそり卵を取り出して、かわりにアヒルの卵を入れておいたのです。
 そして人にだまって、ツルの卵を食べてしまいました。
 それから何日かたって、巣の中の卵がかえると、どうみてもツルの子には見えません。
 親ヅルはびっくりして、その日から悲しそうに飛びまわっていましたが、二、三日後には、ヒナをみんなつき殺してしまいました。
 この事があってから、あれほどぜいたくな暮らしをしていた長者大平も、だんだん貧乏になり、まもなく別荘も本宅も他人の手に渡ってしまったのです。
 
       おしまい   
 
 
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