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 1月29日の日本民話 2
 
  
 早業競べ
 熊本県の民話 → 熊本県情報
 
 ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
 
 制作: ぐっすり眠れる癒しの朗読【壽老麻衣】フリーアナウンサーの読み聞かせ
 
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 投稿者 「眠りのねこカフェ」
  むかしむかし、ある長者(ちょうじゃ)が、《日本一、仕事の早い者をやとう》
 と、お触(ふ)れを出しました。
 すると長者の家に、三人の男たちが集まって来ました。
 「では、お前たちの腕前を見せてもらおう」
 長者が言うと、最初の一人が進み出ました。
 「では、わたしから」
 最初の一人は、十本の梅の木からいっぺんに梅の実を叩き落とすと、それが地面に落ちる前に全部受け取ってしまったのです。
 「これは見事、見事じゃ」
 長者が喜んでいると、次の男が進み出ました。
 「それくらいの事で、驚いてはいけません。梅の実には雄梅(おうめ)と雌梅(めうめ)があるのに、さっきの男はそれをより分けていませんでしたから」
 「ほう、梅の実に雄(おす)と雌(めす)があるとは知らなかった。して、お主はどういう早業を見せてくれるのじゃ?」
 すると、二番目の男は、
 「ノミを、一升(いっしょう)ばかり集めて下され」
 と、頼みました。
 長者は大勢の村人に命令して、一升(いっしょう)ます一杯のノミを集めさせました。
 するとそれを受け取った二番目の男は、いきなり一升ますをひっくり返しました。
 さあ、大変です。
 ノミはいっせいに、ピョンピョンと跳びはねながら逃げていきます。
 「ご心配なく」
 二番目の男は近くにいた女の人の長い髪の毛を二本抜くと、跳びはねるノミを片っぱしから捕まえて、髪の毛で一匹一匹をしばりあげたのです。
 あまりの早業に、長者はビックリです。
 「こりゃ、たまげたわい」
 しかも二本の髪の毛に、オスとメスのノミをより分けていると聞いて、さらにビックリです。
 すると今度は、三人目の男が言いました。
 「いやいや、それくらいの事で驚いてはいけません。第一さっきの男は、ノミを三匹ほど逃がしてしまいました」
 「ほう、それならお主は、何を見せてくれるのじゃ?」
 ちょうどその時、長者の屋敷(やしき)の屋根を修理していた大工が、高い屋根から足を滑らせて下へ落ちてしまったのです。
 それを見た三人目の男は、さっと裏山に走って行って竹を切ってくると、その竹で大きなカゴを作り、次にウマ小屋に飛び込んでワラたばを取って来て、大きなカゴに敷き詰めると、屋根から落ちて来た男を大きなカゴで見事受け止めたのです。
 「こいつはたまげた。人が落ちてくる間に、ワラたばを敷き詰めたカゴを作って人を受け止めるとは」
 三人が三人とも、すご腕の早業だったので、長者は三人を客人(きゃくじん)として大切にもてなしたという事です。
 おしまい   
 
 
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