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 12月12日の日本民話
 
  
 信濃の浦島太郎
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  これは、木曽川(きそがわ)に伝わる浦島太郎伝説です。浦島太郎は上松の寝覚めの床に住んでいて、毎日岩に腰掛けては釣り糸を垂らしていました。
 ある日の事、浦島太郎がいつもの様に釣りをしていると、上流の沢でいきなり鉄砲水が起こり、浦島太郎はあっという間に水に飲み込まれてしまいました。
 それからどれくらいたったのでしょうか、浦島太郎は気がつくと、今までに見た事もない様な、きれいな座敷に寝かされていたのです。
 浦島太郎の側には、きれいな女の人が心配そうに看病をしていました。
 「ここは、どこだ?」
 浦島太郎が尋ねると、その女の人はにっこり笑って言いました。
 「よかった。気がつかれたのでする。ここは竜宮でございます。そして私は、乙姫です」
 「竜宮? これが話に聞く竜宮か」
 「はい。よろしければ、いつまでもいて下さいね」
 
 さて、それから何日かたつうちに、浦島太郎はすっかりここの暮らしが気に入りました。
 乙姫さまはとてもきれいで優しいし、働かなくてもおいしいごちそうが毎日食べられるしで、それこそ夢の様な毎日を過ごしました。
 けれども、浦島太郎には家族がいます。
 いつまでも、ここでこうしているわけにはいきません。
 そこである時、乙姫さまに帰りたいと言いました。
 「そうですか。
 それは残念ですが仕方ありませんね。
 では、どうぞこれをお持ち下さい。
 でも決して、ふたを開けてはなりませんよ。
 開けずにいれば年を取る事なく、いつかまた、今のままの若い姿でお会い出来るでしょう」
 乙姫さまは、なごり惜しそうに玉手箱を浦島太郎に渡しました。
 
 こうして太郎は、久しぶりに故郷へ戻ってきました。
 ところがどうしたわけか、あたりの山や川は少しも変わらないのに、誰一人知った人がいないのです。
 一人ぼっちになった浦島太郎は、それでもまた前の様に岩に腰かけて、釣り糸を垂れながら暮らし始めました。
 けれどもしばらくするうちに、浦島太郎は乙姫さまの事が恋しくてたまらなくなりました。
 そして別れ際にもらった玉手箱の事を思い出すと、開けるなって言われていた事などすっかり忘れて、ついふたを開けてしまったのです。
 その途端、中から白い煙が立ち登って、浦島太郎はみるみるうちに白髪頭のおじいさんになってしまいました。
 おしまい   
 
 
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