|  |  | 福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 9月の江戸小話 > えんまの病気
 9月1日の小話 
 えんまの病気
 ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
 
 投稿者 : 癒しのココロチャンネル
   地獄(じごく)のえんまさまが、突然病気になりました。地獄のお医者さまにみせましたが、えんまさまの病気はいっこうによくなりません。
 えんまさまは、鬼(おに)たちをまくらの近くに呼び寄せて言いました。
 「地獄の医者では無理だから、しゃば(→人間の世界)の名医をつれてまいれ」
 「ははっ。かしこまりました」
 しかし、どういう医者が名医なのかわかりません。
 そこで鬼たちは、えんまさまに尋ねました。
 「あの、名医の見分け方を教えてください」
 するとえんまさまは、少し考えて。
 「うむ、名医の見分け方か。・・・おおっ、そうそう。下手な医者は多くの人間を死なせるから、門口(まぐち→家の出入り口)に幽霊(ゆうれい)が多くいるはず。その反対に幽霊のいない医者が、上手な名医というものじゃ」
 「なるほど。さすがはえんまさま」
 そこで鬼たちは人間の姿に化けると、しゃばへと出かけて行きました。
 
 人間の姿に化けた鬼が医者をたずねると、どの医者の門口にも、幽霊がうろうろしています。
 「これはいかん」
 表通りの医者は全てだめなので、鬼たちは裏通りに行きました。
 するとありがたい事に、幽霊が一人もいない医者の家があります。
 「おう、これこそ一番の名医だろう」
 鬼は中に入り、ちょうど来ていた客に声をかけました。
 「この家のお医者は、さぞかし名医であろうな」
 すると客は、首をかしげて答えます。
 「さあて、どうですかな。何しろ今日、開業(かいぎょう→オープン)したばかりですから」
 ♪ちゃんちゃん(おしまい)
  
 
 |  |  |