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 5月21日の小話
 
 ぶしょう比べ 
   何をするにも、めんどうがる男がおりました。ある日、観音(かんのん)さまにお参りに行き、途中で腹が空いたので茶店に寄りましたが、さて、食うのがめんどうくさい。
 そこでにぎり飯にしてもらい、ふところに押し込んでもらいました。
 腹が減ったまま道を歩いていますと、向こうから腹が減った様な顔をした男が、ずり落ちそうなすげがさ(→すげの葉っぱで編んだかさ)を頭にのせてやって来ます。
 「もしもし、お前さん、腹が減っているらしいな。
 わたしのふところの中のにぎり飯を、食いなさらんか。
 そしてついでに、わたしの口へも入れてくだされ」
 めんどうがる男が言うと、すげがさの男が答えました。
 「バカな事を言いなさんな。
 お前に食わせるような、めんどうな事をするぐらいなら、このかさのひもをとっくに結んでおるわ」
 おしまい  
 
 
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