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12月26日の世界の昔話

ヒツジ飼いの人形と、煙突掃除屋の人形

ヒツジ飼いの人形と、煙突掃除屋の人形
アンデルセン童話 → アンデルセンについて

♪音声配信(html5)
朗読者 : ぬけさくのいちねん草紙

 むかしむかし、ある子ども部屋の棚の上に、小さな陶器のお人形が立っていました。
 そのお人形は金色の帽子に金の靴、バラの花の付いたスカートをはいて、手には長いつえを持ったヒツジ飼いの可愛い娘です。
 ヒツジ飼いの娘の隣には、煙突掃除屋の少年の人形が置いてありました。
 ヒツジ飼いの娘は、この煙突掃除屋の少年が大好きでした。
「煙突掃除のすすでシャツもズボンもまっ黒だけど、ピンク色のほっぺたがとても素敵よ」
 そして煙突掃除屋の少年も、ヒツジ飼いの娘が大好きでした。
「いつかぼくたち、結婚しようね」
「ええ、結婚しましょう」

 ところが、ある日の事、
「ヒツジ飼いの娘さんを、わたしのお嫁さんに迎えよう」
と、古いたんすが言ってきたのです。
 たんすはヤギみたいな長いあごひげと、ヤギみたいな細い足をしたおじいさんですが、たんすの中にはこの家の奥さんのへそくりがたくさん入っているので、たんすはとてもお金持ちです。
「あたし、あんなところへお嫁に行きたくない!」
 ヒツジ飼いの娘はいやがりましたが、お父さんの首振り人形は怒って言いました。
「だめだ! いいかい、今夜たんすさんがガタガタと足音をさせて迎えにきたら、お前はちゃんとお嫁に行くんだよ。何しろわたしは、娘をお嫁にやると返事をしてあるんだからね」
 お父さんは首振り人形なので、何を言われても首を縦に振ってしまい、断る事が出来ないのです。
 困ったヒツジ飼いの娘は、煙突掃除屋の少年に言いました。
「煙突掃除屋さん、あたしを連れてどこかへ逃げて」
「わかった。きみのためなら、何でもするよ」
 煙突掃除屋の少年は仕事で使う長いはしごを使って、ヒツジ飼いの娘を床へ降ろしました。
「でも、どこへ逃げればいいのかしら?」
「机の引き出しに隠れよう」
 二人はカーペットの上を走って、机の引き出しに飛び込みました。
 引き出しの中は小さな人形芝居の劇場で、もうお芝居が始まっていました。
 お芝居はとても悲しいお話しなので、お客のトランプたちは、みんなしくしくと涙を流しています。
「あたしも、何だか涙が出てきたわ。どこか、よそへ行きましょう」
 ヒツジ飼いの娘と煙突掃除屋の少年は急いで引き出しから飛び出すと、ポプリのびんの下まで走りました。
「ねえ、ポプリのびんの中で暮らそうよ。あそこはバラやラベンダーの花びらがいっぱいで、とてもいい香りだよ」
「あら、あそこはだめよ。あのポプリのびんは、わたしのお父さんと仲良しなんだもの。きっと告げ口されて、家に連れ戻されてしまうわ」
「そうか。じゃあ、どこへ行けばいいかな? きみに勇気があれば、煙突のてっぺんに連れて行くんだけどね」
「いいわ。煙突のてっぺんに行きましょう」
 ヒツジ飼いの娘は煙突掃除屋の少年と一緒に、ストーブの中へもぐりました。
「さあ、ぼくに、しっかりとつかまってるんだよ。これから、煙突を登るからね」
「ええっ? こんなまっ暗な所を登るの? 怖いわ」
「大丈夫さ。上の方を見てごらん。ほら、空で光っているお星さまが見えるだろう」
「ええっ、青いお星さまが光ってるわ。とってもきれいね。早く行きたいわ」
 ヒツジ飼いの娘は笑顔で答えましたが、けれど煙突をよじ登るのは大変な事です。
 うっかり足を滑らせると、まっさかさまに下まで落ちてしまいます。
「もう少しだからね。ほら、そこに足をかけて。今度はそっちだよ。そうそう、その調子」
 煙突掃除屋の少年が一生懸命にヒツジ飼いの娘を助けてあげたので、二人はとうとうてっぺんにたどり着きました。
「ああ、やっと着いたのね」
 ヒツジ飼いの娘は、広い世界を見渡しました。
 空にはダイヤモンドの様なお星さまが、キラキラと光っています。
「ねっ、いいところだろ。ぼくたち、ここで暮らそうね」
 煙突掃除の少年がニッコリ笑って言いましたが、ところがヒツジ飼いの娘は、しくしくと泣き出してしまいました。
「どうしたの? どうして泣くの? 何か、嫌な事があるのかい?」
「だって、だって、こんなに高いところだなんて、思わなかったんですもの。あたし、元のお部屋に帰りたいの」
「でも、部屋に帰れば、たんすのおじいさんのところへ行かないといけないよ。それでもいいのかい?」
「ええ、ここにいるよりはましよ」
「・・・そうか、そんなに帰りたいなら、部屋に帰ろう」
 二人はまた煙突の道を通って、部屋の中に戻りました。
 すると、どうでしょう。
 首振り人形のお父さんが、床の上に倒れていたのです。
 お父さんは二人を追いかけようとして、棚から落ちてしまったのです。
 お父さんは、首にけがをしていました。
「お父さん、大丈夫なの?」
「大丈夫なものか。首が動かなくなってしまったわい」
 それからお父さんは、首を縦に振ってうなづく事が出来なくなってしまいました。
 でもそのおかげで、古いたんすが娘を欲しいと言ってきても、
「はい」
と、言わなくてすんだのです。

 こうしてヒツジ飼いの娘と煙突掃除屋の少年は、めでたく結婚する事が出来たのでした。

おしまい

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