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 11月6日の日本民話 2
 
  
 いたずらタヌキと木こり
 秋田県の民話→ 秋田県情報
  むかしむかし、ある山奥に木こりの小屋がありました。
 ある晩の事、木こりが寝ていると、
 ♪カンコン、カンコン
 と、木を切る音が聞こえます。
 (うん? 今ごろ木を切るはずがない。こりゃ、きっとタヌキのいたずらだな)
 木こりがそう思っていると、今度は、
 ♪カンコン、カンコン
 ♪ガリガリ、ドッスン
 と、木を切り倒す音がしました。
 (ほう、タヌキのいたずらにしてはうまいもんだ。まるで本当に、木を切り倒しているみたいだ)
 そこで木こりは戸を開けると、外に向かって言いました。
 「おーい、タヌキ。なかなかうまいぞ」
 さあ、それを聞いてタヌキは大喜びです。
 それからは毎晩のように、
 ♪カンコン、カンコン
 ♪ガリガリ、ドッスン
 と、音をたてました。
 はじめはおもしろがっていた木こりも、毎晩こううるさくては眠る事が出来ません。
 そこで木こりは、戸を開けてどなりました。
 「やい、いいかげんにしろ! 毎晩毎晩うるさくしやがって、ちっとも眠れないじゃないか!」
 ところがタヌキはやめるどころか、ますます調子にのって、今度は木を切り倒す音だけでなく、その木が転がる音まで出すようになりました。
 ♪カンコン、カンコン
 ♪ガリガリ、ドッスン
 ♪ゴロンゴロン、ゴロンゴロン
 次の晩になると、音はますます近くで聞こえるようになり、
 ♪ゴロンゴロン、ゴロンゴロン
 と、小屋をゆすぶるようになりました。
 (もう、かんべんできない!)
 ついに木こりは腹を立てて、タヌキをやっつける事にしました。
 
 その次の晩、木こりはいろりに火をおこすと、山のように炭をつみあげました。
 それから小屋の明かりを消して、戸口のつっかい棒をはずしておきました。
 そのうちに炭はがんがんおこって、いろりがまっ赤になりました。
 木こりが眠ったふりをしていると、やがておもての方から、
 ♪カンコン、カンコン
 ♪ガリガリ、ドッスン
 ♪ゴロンゴロン、ゴロンゴロン
 と、いう音が聞こえてきました。
 音はだんだん近づいてきて、小屋をゆさぶりはじめました。
 それでも木こりはがまんして、眠ったふりをしていました。
 ♪ゴロンゴロン、ゴロンゴロン
 大きな木が、戸にあたるような音がしました。
 (今だ!)
 木こりは飛び起きると、ガラリと戸を開けました。
 そのとたん、戸を叩こうとしたタヌキが勢いあまって小屋の中に転がり、そのままいろりの中へ落ちたのです。
 「あちあちあちー!」
 タヌキはむちゅうでいろりから飛び出すと、尻尾からけむりを出して逃げていきました。
 「ははーん。ざまあみろ!」
 こうして次の晩からは音がしなくなり、木こりは安心して眠る事が出来たのです。
 おしまい   
 
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