|  |  | 福娘童話集 > 日本の民話 その2  > 9月の日本民話
 9月11日の日本民話 2
 
  
 いやしい話
 鹿児島県の民話 → 鹿児島県の情報
 
 ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
 
 投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
 【大人もぐっすり眠れる睡眠朗読】クスッと笑える楽しいとんち 日本昔ばなし集 元NHKフリーアナ
  むかしむかし、薩摩の国(さつまのくに→鹿児島県)に、とんち名人がいました。殿さまはとんち名人の事がお気に入りで、ひまがあればとんち名人を城によんで、とんち名人のとんちを楽しんでいたのです。
 しかし上品な殿さまは、とんち名人のある事が気に入りませんでした。
 それはとんち名人が、おならとか、うんことか、おしりの話を良くするからです。
 
 「これ、お前は人前で、いやしい話を平気で言うが、あれは困るぞ」
 するととんち名人は、首を傾げて言いました。
 「殿さま。いやしい話とは、何でございましょう?」
 「その、なんじゃ、おしりの話とかな」
 「ああ、おしりの話ですか。しかし、おしりと言う物は、むかしから「ふくじり」などと言って、縁起の良い物でございますが」
 「いや、いかんいかん。これからは、しりと言う言葉は使わぬように」
 「それは、難しいご注文ですね」
 「何が、難しい? 簡単な事ではないか」
 「そうでしょうか?」
 「そうじゃ」
 「・・・では、もし殿さまが使われたら、いかがなさります?」
 「おほほほ。もしわしが使ったら、お前に金千両をつかわそう。その代わり、お前が約束を破ったら、今後一切、城への出入りを禁じるぞ」
 「はい、承知しました」
 
 次の日、とんち名人は城へ顔を出す時間になっても、なかなかやって来ませんでした。
 「今日は、遅いのう」
 その日は昼近くになってから、ようやくとんち名人がやって来ました。
 殿さまは、少し機嫌を悪くして言いました。
 「これ、遅いではないか。どうしたというのだ?」
 「はい、ちょっと急ぎの用事で、友だちの所へ寄りましたもので」
 「そんなに、手間取る用か?」
 「はい、お茶をすすめられまして」
 「なに? 茶を飲むのに、なぜそんなに手間がかかるのだ?」
 「はい。それがいくら待っても、なかなかお茶が出てこないので、不思議に思い、そっと裏座敷をのぞいて見ますと・・・」
 「うむ、のぞくと・・・」
 「友だちは木の茶がまで、お湯をわかしておりました」
 「何と、木の茶がまだと?」
 「はい、さようで」
 「何を馬鹿な。それでは茶がまのしりが、焼けるではないか」
 それを聞いたとんち名人は、ニヤリと笑いました。
 「ははーん。殿さま、今、確かに言いましたよ。しりという言葉を」
 「・・・あっ、しまった。これはやられた」
 こうしてとんち名人は、殿さまから千両を頂いたということです。
 おしまい   
 
 |  |  |