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 5月27日の日本民話
 
 
  
 梅津(うめづ)の長者
 京都府の民話→ 京都府情報
 
 ・日本語 ・日本語&中国語
 
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 制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】
 
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 制作 : 果実乃ゐと⁕Kamino Ito⁕
 
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 投稿者 クララの眠れる朗読チャンネル
 
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 投稿者 「眠りのねこカフェ」
 
        
          | ♪音声配信(html5) |  
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          | 朗読者 : エクゼムプラーロ |   むかしむかし、山城の国(やましろのくに→京都府南部)の梅津というところに、貧しい暮らしをしている夫婦がいました。夫婦は今の貧しい生活から抜け出たいと願い、毎日えびすさまにお祈りをしました。
 でもそれは自分の欲からではなく、夫は妻に、妻は夫に、おいしい物を食べさせ、あたたかい着物を着せてやりたいと願ったからです。
 
 ある時、男がせりを摘(つ)みに野原に出かけていると尼さんが通りかかって、困り果てた様子で京への道を尋ねてきました。
 男はていねいに道の説明をしていましたが、なかなかうまく伝わらないので、男はわかりやすいところまでの道案内をしてやりました。
 そして目的地まで行くと、再びていねいにそれからの道を教えたので、尼さんにもようやく理解が出来たようでした。
 とても喜んだ尼さんは、
 「おかげさまで、助かりました。
 これはわずかですが、私のお礼の気持ちです。
 どうぞお餅でも、買って食べて下さい」
 と、男に一文銭を渡しました。
 「これはどうも、ありがとうございます」
 男は一文銭を握りしめると、いちもくさんに家へと帰りました。
 そしておかみさんに尼さんとの出来事を話して、さっそく餅を買ってくるように言いました。
 おかみさんも、とても喜んで、
 「今日は、何ていい日なんでしょうね。せりもたくさん手に入ったし、お正月でもないのにお餅まで食べられるのだからね」
 と、急いで餅を買いに走りました。
 
 その一文銭で、餅を二個買う事が出来ました。
 つきたての柔らかくて白いお餅を大事そうに抱えながらの帰り道、おかみさんは粗末な身なりのおじいさんに声をかけられました。
 「そこのお人。どうぞ人助けと思って、このあわれな年寄りに、その餅を一つめぐんでは下さらんか」
 大切なお餅でしたが、おかみさんはおじいさんににっこり微笑むと、
 「はい。どうぞ、おあがり下さいな」
 と、餅を一つ、おじいさんに渡しました。
 これでお餅は一つきりになってしまいましたが、おかみさんの心は前よりももっと温かでした。
 そして家に帰って、夫にその事を話すと、
 「それは、とてもいい事をしたね」
 と、男もとても喜び、残りの餅を仲良く二つに割って食べました。
 
 さて、その夜の事です。
 二人がとても幸せな気持ちで寝ていると、二人の夢の中に突然えびすさまが姿を現して、こう言ったのです。
 「今日はお前たち、大そう良い事をしたな。
 餅をめぐんでやったのは、実はこの家に住みついている貧乏神じゃ。
 その貧乏神がわしのところに来て、涙ながらに言った。
 『夫婦のやさしい心根に心をうたれたから、この家を出て行きたい』と、
 そしてその代わりに、福の神を呼び寄せて欲しいとな。
 そこでわしは仲間の福の神を呼んで、皆でこの家をもりたてる事にしたのじゃ」
 えびすさまの言葉が終わったとたん、大黒様(だいこくさま)や福禄寿(ふくろじゅ)、寿老人(じゅろうじん)や布袋(ほてい)さまが次々に現われ出て、
 「さあ、ここが新しい家じゃ。皆で祝いの酒盛りだ」
 と、酒盛りを始めました。
 そしてお酒がまわり始めた頃、えびすさまと布袋さまが相撲をとることになりました。
 見事な名勝負の末、二人は組みあったまま夫婦の寝ている布団の上に転がりました。
 「うひゃー!」
 「きゃあー!」
 びっくりした男とおかみさんは、そのひょうしに目を覚ましました。
 「えびすさまが」
 「布袋さまが」
 二人は同じ夢を見ていた事を知って、さらにびっくりです。
 
 その後、この夫婦は幸運続きでついに梅津一の大金持となり、人々から梅津の長者と呼ばれました。
 おしまい   
 
 
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