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 10月22日の小話 
 春の空気   むかし、ある小さな寺に、和尚さんと小僧が住んでいました。春の日の事、のんびりと日なたぼっこをしていた和尚さんが、
 「かめの中に、この気持ちの良い春の香りの空気を入れておいて、冬になったら吸おう」
 と、大きなかめの中に春の香りの空気をいっぱい入れて、しっかりとふたをしました。
 ところが何も知らない小僧は、掃除の時にかめをふたを開けてしまったのです。
 するとかめの中から、気持ちの良い春の香りの空気とともに、《春の空気》と書かれた紙きれが出てきました。
 「うーん。良い香りだ。・・・あっ! しまった! 和尚さまが大切にしていた春の空気を出してしまった。どうしよう?」
 小僧は色々と考えたあげく、春の空気を全部出してしまい、その代わりににかめの中に、
 ブーーッ!
 と、おならを入れました。
 
 さて、やがて冬になったので、和尚さんが春の香りを楽しもうと、かめのふたを取ってにおいをかいでみました。
 すると
  プーンと、何ともくさいにおいがします。
 和尚さんは、思わず鼻をつまんで言いました。
 「しまった。春の空気が、夏の間にくさってしもうた」
 ♪ちゃんちゃん(おしまい)
  
 
 
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