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福娘童話集 > 百物語 > 三月

(移転中)5月22日の百物語
(3月25日的日本鬼故事)
鬼の目玉

鬼の目玉
鬼眼

日本語 ・日本語&中国語

むかしむかし、ワラビ取りに行った娘が、帰り道に迷ってしまいました。
到好久以前、女的上山摘蕨菜、回來忘記路了。

困った娘がふと前を見ると、森の奥に大きなお屋敷があるではありませんか。
剛不曉得怎麼搞、前面就是條好大的屋、就到林子裡面。

(こんな山の中に、どなたのお屋敷かしら?)
那個到這深山老林裡面起房子?

娘は不思議に思いながらも、そのお屋敷に声をかけました。
女的就感覺不思議、開始敲門。

「もし、どなたかおられますか?
有人到吧?

道に迷って、難儀(なんぎ)しております。
我迷路了、有困難

どうか一晩、泊めてくださいませ」
可以讓我住一晚吧

すると屋敷の中から若い男が現れて、親切に娘を迎えてくれました。
屋子裡面出來一條年輕男的、也是客套一哈、幫女的接待了。

「それは、お困りでしょう。
先港客套話

男の一人暮らしで使用人もおりませんから、大したもてなしも出来ませんが、それでよければ休んでお行きなさい」
我屋子裡面就我一個、也覓得下人、服侍不到你、你願意就進來住。

若者は礼儀正しく身なりも立派だったので、娘はすっかり安心して泊めてもらう事にしました。
女的看男的派頭也還可以、就也還放心。

次の日、娘が目を覚ますと、もうすっかり朝ご飯の用意が出来ているではありませんか。
第二天女的一醒、男的幫早飯都煮好了。

「泊めてもらった上に、朝ご飯の用意までしてもらうとは」
讓我住還幫我煮早飯

娘はすっかり申し訳ない気持ちになり、せめてものご恩返しに家の仕事を手伝わせてもらおうと、もう一晩だけ泊めてほしいと若者に頼みました。
女的也是倍感深情不好意思、就跟男的提再讓她住一晚上、今天就幫男的屋裡做事、洗點衣服盤子什麼的當回饋。

すると若者は、にっこり笑って、
男的就笑

「家の事は、気にしなくても大丈夫ですよ。
港這些你不用操心

それより、あなたの様な娘さんがいてくれると、わたしもうれしいのです。
比起這條你到我就開心。

よければ一晩とはいわず、好きなだけ泊まっていきなさい」
你願意就一直住落來算了。

と、娘に十三個の鍵(カギ)のついた、鉄の輪っかをくれました。
就幫屋裡鑰匙甩起女的了、有一十三把都串到一起的。

「わたしは用があって、昼間は家にいません。
我有事白天不得到屋。

その間、退屈でしょうから、この鍵をお渡しします。
你中間就得無聊、我就幫這鑰匙過你。

この屋敷には鍵のかかった部屋が十三室あり、それぞれに面白い物が入っています。
一十三把鑰匙對應十三個房門、裡面都裝的有稀奇的東西。

けれど、十三番目の鍵だけは、決して使ってはいけません。
你只要開前十二個門就夠了、記得、第十三把鑰匙千萬莫用。

わたしも理由は分かりませんが、父からその様に言われたので、十三番目の部屋だけは、わたしも開けた事がないのです」
我也不曉得具體為甚麼、但是我老頭幫鑰匙跟我過的時候、也是這麼交待的、所以我也覓開過第十三個門。

若者はそう言うと、どこかへ出かけてしまいました。
年輕人港完就出門了

一人になった娘は、せめて掃除でもしようと、若者からもらった鍵で部屋を開けてみました。
女的得鑰匙了、至少先幫房間要掃一哈、就開門去了。

「まあ!」
驚呼

最初の部屋を開けると、そこは屋敷の中とは思えないほど広い野山が広がっていて、人形の様に小さな人たちが、たくさん住んでいたのです。
第一個門一開、裡面是廣闊的山野、裡面住到都是一些螞蟻大的小人。

大人たちはおもちをつき、子どもたちがコマを回して遊んでいるので、ここがお正月の部屋だとわかりました。
大人到打粑粑、小兒到鞭陀螺、這是個代表正月的房間。

娘はすっかり楽しくなって、ほかの部屋も開けて見ました。
女的一哈就來興致了、這就開第二個門。

次の部屋は二月の部屋で、辺り一面に梅の花が咲き乱れて、ウグイスが美しい声で鳴いています。
二月、一片寒梅、鶯啼

三番目は三月で、小人たちがひな祭りをしています。
三月是傳統節日雛祭、舉辦活動的是小人偶。

四番目は四月で、花祭りなのか、小さな小さな仏さまに甘茶をかけてお祝いをしています。
四月花祭、對到個好小的世尊澆甘茶

五月の部屋は、大小色とりどりの鯉のぼり。
五月各種各樣的鯉魚旗。

六月の部屋は、田植えをしています。
六月插秧

七月は、七夕のお祭りです。
七夕。

八月は、十五夜です。
中秋

九月は、菊の節句。
重陽

十月は、田んぼの稲を刈り取っています。
十月收稻穀

十一月は、大根の収穫です。
十一拔蘿蔔

十二月は雪景色で、子どもたちが雪合戦をして遊んでいます。
十二雪景、雪仗

「どれもこれも、すてきだわ」
女的是接連震撼。

こうして一年が終わりましたが、まだ最後に十三番目の部屋が残っています。
一年十二月全看完了、就剩最後第十三個門了。

娘はもう夢中になっていて、若者の言った言葉をすっかり忘れていました。
女的還到興頭上面、男的港的話都忘記了。

娘が十三番目の部屋の鍵を開けてみると、中はガランとしていて、部屋のまん中に箱が一つ置いてあります。
十三個門一開、裡面幽靜空曠、正中央一個箱子擺到的。

箱のふたを開けてみると中には水が入っていて、二つの丸い水晶玉が浮かんでいます。
箱子裡面是水、浮到兩顆圓玉。

「この水晶玉、まるで目玉の様だわ」
這玉、真的好像眼珠一樣。

娘は急に怖くなって、箱を閉めると部屋を出て元通りに鍵をかけました。
女的感覺玉有點毛人、幫箱子蓋到、像原來一樣幫門鎖起來。

さて、夜になると若者が帰って来ましたが、何だかひどくやつれた顔をしています。
晚上男的回來、人就好憔悴。

「あの、何かあったのですか?」
女的就關心、問發生甚麼了。

娘が心配して尋ねても、若者は首を振って、
男的就是擺腦殼

「少しばかり、疲れているだけです。いつもの事だから、気にしなくてもいいですよ」
也不準備港、只是港是疲憊、喊女的不要在意。

と、にっこり微笑み、すぐに寝てしまいました。
還笑一哈、馬上就睡了。

次の日も、また次の日も、若者は出かけて行くのですが、夜になると今にも死にそうな顔で戻って来て、娘が用意した夕飯を食べるとすぐに寝てしまうのです。
接二連三、男的每次回來跟死人一樣的、幫晚飯吃完馬上就睡覺了。

(毎日、だんだんとやつれていくわ。このままでは、死んでしまうかも)
女的看這情況太不對頭了、擔心長久落去人要覓得了。

心配した娘は、ある日、若者のあとをつけてみる事にしました。
女的有天就偷偷跟男的後面

そうとは知らない若者は家を出ると、またすぐに裏口から屋敷へと入って行きました。
男的從屋裡一出去、又從後門往屋子裡面走。

娘があとからと入ってみると、そこは屋敷の中ではなくて、暗い洞窟の中につながっていました。
女的跟到後面、裡面連接的不是屋子裡面、而是一條黑暗的山洞。

洞窟の中では真っ赤な火がごうごうと燃えていて、そのまわりには恐ろしい顔をした鬼たちが大勢いました。
洞裡面燒到火、全是好駭人的鬼

若者はその鬼たちに裸にされて、棒で叩かれたり、火であぶられたりしているのです。
鬼幫男的衣服脫完、用棒子打他、火燒他。

鬼の一人が、若者に怒鳴りました。
其中一條鬼對到男的大吼。

「やい! わしの目玉を、どこへやった! そろそろ白状しないと、本当に殺してしまうぞ!」
你再不港我的眼睛到哪裡、我真的要幫你殺了。

その鬼の顔には目玉がなくて、二つの丸い穴がぽっかりと開いています。
那條鬼眼睛裡面二個珠子不見了、就留二個空洞

「だからわたしは、何も知らないのだ」
我真的甚麼都不曉得

「そんなはずはない! わしの目玉を取ったのは、お前の父親だ。息子のお前が、知らぬはずはないだろう!」
你老頭幫我眼睛取去、你是他兒不可能不曉得!

「何度も言うが、本当に知らないのだ」
我不曉得啊

そのやりとりを聞いて、娘はハッと思いました。
女的反而反應過來了

(もしかすると、十三番目の部屋にあった二つの水晶玉は、鬼の目玉なのかもしれない)
第十三個門裡面的玉、就是鬼眼。

そう考えた娘は慌てて洞窟を出ると、十三番目の部屋から水晶玉を取って戻って来ました。
女的急到回屋取鬼眼。

そして鬼に、言いました。
就邏鬼去了、看到鬼、跟他這麼港。

「あなたが探している目玉というのは、これの事ではありませんか?」
這是你的鬼眼吧?

娘が差し出した水晶玉の一つを受け取った鬼が、顔に開いた穴にそれをはめ込みました。
鬼幫眼珠子往自己眼睛裡面一塞、女的只跟鬼交一個。

すると水晶玉の目が、娘をギロリとにらんで、
跟到就用這個眼珠對到女的盯。

「これじゃ! これこそが、わしの目玉じゃ! 娘、もう一つあるはずだ。残りも寄こせ!」
就是這個、快幫另外一個拿來。

と、怖い声で言うのです。
威脅她。

けれど娘は、もう一つの水晶玉をしっかりと握りしめると、
女的不打算過、幫珠子捏得好緊。

「いいえ! その人を放してくれるまでは、これは返せません。はやく、その人を放してあげてください」
你快點放人、不然我就不退。

と、言いました。
交涉

すると鬼は急におとなしくなって、水晶の目から涙を流しながら言うのです。
鬼一哈就哭了、眼睛水狂噴

「怒鳴ったりして、すまない。
我不該吼你的

それもこれも、目玉を取り戻したい一心でやった事。
我只是想取我眼睛

けっして、悪気はない。
覓其他想法

実は、わしはこの辺りで悪さをしていた鬼だが、
實際我是這邊的惡鬼

この若者の父親にこらしめられて、目玉を抜かれてしまったのだ。
但是被男的他爹眼珠子取走了。

あれからわしも、すっかり反省して、もう悪さはしない。
這後面我也收斂了

目玉を返してくれれば、もう二度とこの男には手を出さぬし、人間たちの前には姿を現さぬと約束しよう」
你只要幫眼睛退我、這男的我以後就不動了、再也不出現到人面前、我答應你

「では、本当に改心するのですね。本当に、その人には危害を加えないのですね」
女的看樣子也是相信了、又反復交待鬼不要再邏男的

「ああ、鬼というのは、こう見えても約束は必ず守る」
我們鬼不騙人。

そこで娘が目玉を返してやると、鬼は大喜びで若者を開放して、そのままどこかへ行ってしまいました。
鬼取到另一個眼珠子、笑了個卵卯翻天、再就不曉得往哪裡走了。

娘は、ぼろぼろになった若者を助け起こすと、
女的幫狼狽的男的扶起來。

「ごめんなさい。開けてはいけないと言われたのに、十三番目の部屋を開けてしまいました」
先是承認自己幫第十三個門開了、辜負承諾。

と、若者に謝って、鍵を返しました。
幫鑰匙退起男的、也是內疚。

「いいえ、あなたのおかげで鬼も改心し、わたしも長い苦しみから解放されました。これでわたしも、成仏できます」
不不不、你讓鬼從良了、幫我也解放了、這麼我也可以昇天了。

「成仏?」
昇天?

「さあ、はやくここを出ましょう。
對、你快點出去

ここは、あの世とこの世のはざまです。
這裡是生跟死的交界

生身のあなたが、長くいてはいけません」
肉身進來不了好久的。

若者はそう言って、娘を連れて洞窟を出ました。
男的也是這麼港幫女的帶出洞口。

「あっ、まぶしい」
一哈就好刺眼

薄暗い洞窟から地上に出た娘は、日の光に目がくらんで思わず目を閉じました。
從黑暗的洞窟一哈感受到陽光、女的眼睛著一照、馬上閉起來。

そして再び目を開けた時には、あの若者の姿も屋敷も無くなっていたのです。
等開眼、甚麼都不見啦、男的還是房屋。

「あら、どこへ行ってしまったのかしら?」
女的覓反應過來、還驚呼男的去那裡了。

娘がふと足下を見ると、あの若者の物なのか、真っ白いしゃれこうべ(→ずがいこつ)が一つ転がっていました。
在往地上一看、剛好一個頭蓋骨就倒到腳邊的、估計就是男的吧。

おしまい
结束

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