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1月26日の日本の昔話

ぼたんの花と若者

牡丹の花と若者
牡丹花摎後生人

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客家語 : 鄧文政(ten33 vun55 zhin11)

♪音声配信(html5)
音声 おはなしや

にほんご(日语)  ・ちゅうごくご(中文) ・日语&中文

 むかしむかし、能登の国(のとのくに→石川県)に、一人の若い百姓がいました。
 頭擺頭擺,在能登國(現在个石川縣)戴一位後生農夫。

 若者は子どもの頃から木や花が好きで、よく山へ行っては珍しい草や花を取って来て庭のすみに植えたり、鉢で育てたりして大事にしていました。
 從細就盡愛樹仔摎花草,時常會去山頂尋兜珍貴个花、草轉來屋下,種在天墀坪角頭,無就種在花缽,小心照顧。

  この若者が住む村境に深見山(ふかみやま)といって、一段と高い山があります。
 後生人在深見山行个時節,毋知那傳來个香味。
 
 さて、ある暑い夏の日の事。
 有一年熱天某日个事。

  若者が深見山を歩いていると、どこからともなく良い香りが漂ってきました。
 後生人在深見山行个時節,毋知那傳來个香味。

  甘い様な、酸っぱい様な、それでいてどこか懐かしい、とても不思議な花の香りです。
 有息甜味又有息酸味,一種盡奇怪个花香。

  花の事なら何でも知っている若者でしたが、この香りをかいだのは今日が初めてです。
(いったい、何の花だろう?)
 有關花个事情,麼个就知个後生人,這種香味係佢第一擺鼻到。
(到底係麽个花呢?),


  若者は香りをたよりに、山の奥へ奥へと歩いて行きました。
 後生人順等花个香味行等去,行到深山肚。

  しばらくして辺りを見回すと、尾根一つ越えた向こうの山に、薄紅色の花畑がありました。
 佢就看看四向頭看一下仔,看到龍峎對面山有一个水紅色个花園。

  さっそく尾根づたいに、若者は花の方へと近づいて行きました。
 佢就遽遽盤過龍峎向該花園个方向行等去。

  めったに人の入らない道もない山奥を進み、もう少しという所で若者は思わず足を止めました。
 行到無路好行个深山,後生人忽然間頓恬下來。

 そこはちょうど馬の背中の様に、右を見ても左を見ても切り立った岩山です。
 該位个地形斯像馬背囊樣,無論係左片析抑係正片析都係當嶇个岩石山。

  それでも若者は花を見たい一心で岩角を掴み、木の根につかまって高い崖の上をはう様にして渡って行きました。
 一心想愛看花,佢捉等石頭、樹根像猴仔樣爬等去。

  何とか渡り終わると、そこは目の覚める様な一面のお花畑です。
 總算到了該位,看到裡肚開歸片仔花會晟人个花園。

  見た事もない大きな牡丹(ぼたん)の花が、いっせいに咲ききそっていました。
 從生人毋識看過恁大个牡丹花,相爭開。

「ああ、こんな山の中に、こんなに美しい牡丹の花があるとは。それにしても、もう季節もはずれているのに」
「啊,這種山頂,有這恁靚个牡丹花,毋過季節毋著呢。」

  どう考えても不思議ですが、でも花の大好きな若者は夢の中へ誘い込まれる様な香りに胸を踊らせて、しげしげと花に見とれていました。
 想到這恁奇怪个事情,對盡愛花个後生人來講,該種餳人入夢樣个香味,佢心肝哱哱跳,見擺看花看到呆忒。

  たくさんの花の中でも、特別あざやかな花を咲かせた大牡丹が、ひときわ若者の目を引きつけました。
 恁多花裡肚開到特別萋頭个大牡丹花還阿餳佢。

「ああ、何と美しいのだろう。こんな花を家の庭に咲かす事が出来たら」
と、思わず、つぶやいた時です。
「啊!這種花拿轉屋下丹墀坪種若係會開花,毋知幾靚哦!」
 無想到當當在該呢呢哪哪个時節,


  突然花のかげから、一人の乙女(おとめ)が現れました。
 忽然間花影下背走出一個少女來。

  まるで天女の様な、美しい乙女です。
 像係仙女恁靚个少女。

(こんな所に人がいるとは。まさか天女?)
(這種位所會有人,像係仙女?)

  不思議に思いながらも、若者はその乙女を見つめていました。
 雖然感覺恁奇怪,佢還係緊捉少女看。

  乙女は何の音も立てずに若者のそばへ近よって来ると、にっこりと笑って言いました。
 少女恬恬接近後生人脣頭,笑咪咪講:

「その花を一枝、わたしに折って下さいな」
「該花拗一蕊分𠊎哪。」

  その声があまりにも綺麗だったので、若者はびっくりしました。
 該聲音當靚盡好聽,後生人著驚一下。

「どうか、その花を一枝、わたしに折って下さいな」
「仰般,該花拗一蕊分𠊎哪。」

  乙女は大きな美しい牡丹の花を指さして、また言いました。
 少女手指該大蕊又靚个牡丹花。

「はっ、はい。しかしここは、わたしの花畑ではありません。どの花も、勝手に折るわけにはいきません」
「好,好,毋過這毋係𠊎个花園,麽个花都做毋得儘採拗。」

「いいのですよ。ここは、わたしたちの花畑です。その花は、わたしなのです。どうか、あなたのお手で。・・・あなたのお手で、折って下さい」
「做得啊!這係𠊎兜个花園,該花乜係𠊎兜个,仰般,用你个手...用你个手拗分𠊎。」

  その声は前と違って、とても寂しそうです。
 該聲摎頭下無共樣,特別孤栖。

(自分の言葉が、乙女の心を傷つけたのかもしれぬ)
(自家个言語傷到少女个心抑無一定)

  若者はそう思って、指差された花の一枝を折り取って、女の手に渡しました。
 後生人恁想樣想,將手指指該蕊花拗下來,拿分少女。

  その途端、若者は気を失って、ばったりと倒れてしまったのです。
 當下後生人毋會敨氣,忽然間橫下去。

  さて、それからどのくらい時がたったのでしょうか、どこか遠くの方で、誰かが呼んでいます。
 毋知經過幾久?幾遠个地方?麽儕在該喊佢?

  目を開けてみると、若者は一人の老人に介抱されていました。
 擘開目珠來看,看到一個老人家在該照顧佢。

「おお、お気がつかれましたか」
「哦、醒咧係無?」

  老人は、ここへたきぎを取りに来て、死んだ様に倒れている若者を見つけたのです。
 老人家來這位撿樵,發現後生人像死忒樣橫在這位。

「お前さんは、あの高い崖から落ちなさったんだね。それにしても、よく大した怪我もせんで」
「你對這恁高个崩崗石壁跢下來,該載無麽个大著傷。」

  老人は若者を助け起こすと、若者を背に背負って山を下って行きました。
 老人家摎後生人牽䟘起來背下山。

  その後ろ姿を、高い崖の上から大きな牡丹の花が静かに見送っています。
 石壁頂該蕊大牡丹花,恬恬看等這身影下山。

  その花には、朝露が乙女の涙の様に光っていました。
 該花頂像仙女个目汁樣个露水金晶𥍉亮。

  そして若者が家に帰ってみると、不思議な事に山で見たあの大牡丹の花が、前庭に咲いていたのです。
 等佢轉到屋下奇怪个事情發生了,山頂看到該大牡丹花在屋面前開等在該。

「・・・これは」
「...這係」

  不思議な事に花はそれから何年も何年も、いつも変わらない美しい姿で咲き続けました。
 想毋解个事係花自該量時開始逐年、逐年、毋管哪量時都共樣開到當靚。

「この牡丹が、あの美しい乙女だったのか」
「這牡丹花敢係該個靚靚个龍宮仙女?」

  若者はその牡丹の花をとても大切にして、一生妻をめとらなかったという事です。
 後生人對該牡丹花非常个痛惜,聽講一生人無討夫娘。

おしまい
煞咧

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