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 1月6日の日本の昔話
 
    おわかれにきたむすめ  むかしむかし、ある村に、ひとりぐらしのおばあさんがいました。むすめをとおくの町へお嫁にやってしまってから、長いことひとりぐらしです。
 「このあいだの、むすめの手紙では、からだがおもわしくないといっていたが、いまごろ、どうしておるかいのう?」
 あるばん、おばあさんが心配していると、いつかえってきたのか、むすめがボンヤリとたっていました。
 「おや。よくかえったな。さあ、おあがり」
 すると、むすめはスーッと、ざしきにあがってきて、おばあさんにおじぎをしました。
 ニコリともしないし、ひとこともしゃべりません。
 むすめはぶつだんに手をあわせると、まもなく、スーッと、きえてしまいました。
 「ふしぎなこともあるもんじゃ。むすめがきていたあの着物は、嫁にやるときにもたせてやったもの。むすめにまちがいないのに、どうして、ひとこともいわないで、かえってしまったんじゃろ」
 さて、つぎの日。
 おばあさんのところに、町から使いがきました。
 むすめがきのうのばん、いきをひきとったというのです。
 「それは、何時ごろのことで、むすめが死んだときに、これこれこういうがらの着物をきておらなかったじゃろか?」
 おばあさんがきくと、
 「はい。そのとおりですが、どうして、知っているんです?」
 つかいの男がたずねかえしました。
 「やっぱり、あれはむすめがゆうれいになって、おわかれにきてくれたんだね」
 おばあさんからわけをきいた男は、くびをひねりながら、かえっていきました。
 おしまい   
 
 
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