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      4月21日の日本の昔話 
        
        
       
フクロウの染め物屋 
       むかしむかし、フクロウが染め物屋(そめものや)の店を出しました。 
 お店にはカンバンをかけて、入りロには、のれんをさげて大はりきりです。 
「さあ、いらっしゃい、いらっしゃい。ふくろうの染め物屋は、なんでもじょうずに染めますよ。仕事は早く、お値段のほうもぐっと勉強して、お安くなっております。さあ、さあ、どなたでもいらっしゃい」 
 仲間の鳥たちが、めずらしそうにやってきて、 
「じゃ、わたしの羽を赤く染めてくださいな」 
「わたしは、緑がいいわ」 
と、たのみました。 
「はい、はい、かしこまりました。さあ、どうぞこちらへ」 
 お客は、あとからあとからやってきました。 
 カナリアは黄色に、ウグイスは黄緑に、おしゃれなツルは、頭の上を帽子のように赤く染めてもらってゴキゲンです。 
「まあ、すてき。あなたもすてきよ」 
 みんなは大喜び。 
 おかげでフクロウの染め物屋は、大評判です。 
「よし、ぼくもひとつ、染めてもらおうかな」 
 カラスが、やってきました。 
「はい、いらっしゃいまし。お色は、なににいたしましょう」 
「そうだねえ・・・」 
 カラスは、いばっていいました。 
「今まで、だれも持ってないような、すばらしい色でなくちゃね。まあ、ひとつ頼むよ」 
「今まで、だれも持っていない色ね。・・・はい、承知しました。さあ、どうぞこちらへ」 
 フクロウは大きなつぼの中へ、染め粉をといて入れました。 
「さあさあ、この中で行水(ぎょうすい)してください。すばらしい色になりますよ」 
 そこでカラスは、つぼの中にスッポリ入ってたずねました。 
「どう? もう染まった?」 
「ほう、こりゃ、いい色になった」 
 フクロウは、ほめました。 
「どんな色かな?」 
 カラスは大喜びで、小川の水に自分の姿をうつしてみました。 
 すると、どうでしよう。 
 頭から尾の先まで、まっ黒けです。 
 カラスはカンカンにおこって、フクロウにくってかかりました。 
「やい、やい、なんでこんな色に染めた!」 
「なんでといったって、こんなすてきな色はだれもいませんよ。あなた、おひとりです」 
「だれもいないからといって、よくもまっ黒けにしてくれたな。このばかぁ、ばかぁ、ばかぁ!」 
 カラスは、フクロウにつかみかかりました。 
「ごめん、ごめん」 
 フクロウは、あわてて逃げ出しました。 
 けれど、いくらカラスがおこっても、一度染めた色はどうにもなりません。 
 それからカラスは、ずーっとまっ黒のままです。 
 フクロウの染物屋は、それでお店をしめてしまいました。 
 そしてフクロウは、カラスにけんかをしかけられるのがこわくて、今でも昼間は森にかくれているのです。 
      おしまい 
                  
         
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