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 友だちにあげたリンゴ
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  むかしむかし、あるところに、四人の男の子を持つお百姓(ひゃくしょう)さんがいました。一番上の子どもの名前は太郎、二番目は次郎、三番目は三郎、四番目は四郎といいました。
 ある時、お百姓さんが町へ行くと、とても大きなリンゴが売っていました。
 とてもめずらしかったので、子どもたちのおみやげに七つ買って帰りました。
 太郎と次郎と三郎は、二つずつもらいました。
 四郎はまだ小さいので、一つだけです。
 さて次の晩、お百姓さんは子どもたちを集めて、リンゴのことを聞くことにしました。
 まず、四郎にたずねました。
 「四郎や、リンゴはどうした?」
 すると四郎は、ニッコリ笑い、
 「みんな食べちゃった。おいしかったよ」
 と、言いました。
 その言い方がとてもかわいかったので、みんなはどっと笑いました。
 「では、太郎はどうした?」
 「リンゴのタネをとって、リンゴの木をつくるよ」
 「なるほど、お前はわしのあとをついで、りっぱなお百姓になれるぞ」
 お父さんはよろこんで、太郎をほめました。
 「次郎は、どうした?」
 「友だちに見せて、売ってやったよ。すごくもうかった」
 「売ってしまっただと。お前はなんてよくばりだ」
 お百姓さんは、ガッカリです。
 「ところで、三郎はどうした?」
 「・・・・・・」
 おとなしくて気の弱い三郎は、何も言いません。
 それでも、お百姓さんが何度もたずねるので、
 「みんな、あげちゃった」
 と、言いました。
 「なに、あげてしまっただと? せっかくおみやげに買ってきてやったのに。いったい、だれにあげたんだ?」
 お百姓さんが大きな声を出したので、三郎はいよいよなきそうな顔で言いました。
 「友だちが病気でねていたので、持っていってあげたんだよ。でも、もったいないと食べてくれないので、まくらもとへおいてきた」
 「よくやった! えらいぞ、三郎」
 お百姓さんは思わず三郎をだきよせて、頭をなでました。
 それから、兄弟たちに向かって言いました。
 「太郎もりっぱだが、みんな、三郎のようなやさしい心をわすれてはいけないよ」
 おしまい       
 
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