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5月14日の小話
こじきのほこり
   橋の下で、ひとりのこじき(→詳細)が、目をまわして、たおれていました。
   なかまのこじきたちはおどろいて、
  「どうした、どうした。気分が悪いのか?」
  と、きくと、
  「気分が悪いのではないが、ここ二、三日というもの、どうもついていなくて、まったく、おもらいものがないのだ。もう腹がへって、とうとうぶったおれてしまった」
  と、いうのです。
   なかまたちは、
  「おまえも、ずいぶんえんりょ深いなあ。目をまわすほど、腹がへっているんなら、なぜいわねえんだ。こちとらの分をわけてやったものを、さあ、もらいもので悪いが、このにぎりめしを食え」
  と、いうと、目をまわしたこじきは、まじめな顔をして、
「バカも休み休みいうものだ。こじきはしても、ひとからものをもらってまで、食わぬわ」
おしまい