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 しあわせ の おうじ
       
 
 
 むかしむかし、ある まち には、うつくしい『しあわせ の おうじ』 の ぞう が ありました。 
          その『しあわせ の おうじ』 の からだ には、きんいろ に ひかりかがやく きんぱく が はって あります。  
          まち の ひとたち は、この すばらしい おうじ の ように しあわせ に なりたい と ねがいました。  
 まち に、いちわ の ツバメ が とんできました。 
         「ふうーっ。ずいぶん と、おくれちゃったな。みんな は もう、エジプト に ついたのかなあ?  
 ツバメ は しあわせ の おうじ の あしもと に とまり、そこ で ねむろう と しました。 
 すると ポツポツ と、しずく が おちて きました。 
 「あれれ、あめ かな? くも も ないのに、へん だな。・・・あっ、おうじさま が ないている。もしもし、どうした の ですか?」 
 ツバメ が たずねる と、おうじ が こたえました。 
         「こうして たかい ところ に いる と、まちじゅう の かなしい できごと が め に はいって くるんだ。  
 「かなしい できごと?」 
         「ほら、あそこ に ちいさな いえ が あるだろう。こども が びょうき で、オレンジ が たべたい と ないている。  
         「それ は、おきのどく に」  
 ツバメ は おうじ の こし の けん の ルビー を はずして、ねつ で くるしんでいる おとこのこ の まくらもと に ルビー を おきました。 
 「つらい だろう けど、がんばってね」 
          ツバメ は つばさ で、おとこのこ を そっと あおいで かえってきました。  
 「ふしぎ だな。こんな に さむい のに、なんだか からだ が ポカポカ するよ」 
         「それ は、きみ が よいこと を したからさ。ツバメくん」  
         「ぼく の め の サファイア を ひとつ、さいのう の ある まずしい わかもの に はこんで やって くれないか?」  
         「・・・うん」  
         「これ で パン が かえる! さくひん も、かきあげられる ぞ!」  
         「おうじさま。これから ぼく は、なかま の いる エジプト に いきます。  
         「どうか、もう ひとばん だけ いて おくれ。あそこ で、マッチうり の おんなのこ が ないているんだ。  
 「それでは、おうじさま の め が みえなくなって しまいますよ」 
         「いいんだ。あの こ が しあわせ に なれる の なら、め が みえなくとも」  
 ひと の しあわせ の ため に じぶん の め を なくした おうじ を みて、ツバメ は けっしん しました。 
         「おうじさま、ぼく は もう たび に でません。ずっと、おそば に います。  
         「ツバメくん。ありがとう」  
 「それでは、ぼく の からだ に ついている きん を ぜんぶ はがして、まずしい ひとたち に わけて くれないか」 
 「わかりました」 
 ツバメ は いいつけどおり おうじ の からだ から きんぱく を はがす と、まずしい ひとたち に とどけて やりました。 
 やがて、そら から ゆき が まいおちて きました。 
 とうとう、ふゆ が きたのです。 
          さむさ に よわい ツバメ は、こごえて うごけなく なりました。  
          ツバメ は さいご の ちから で おうじ に キス を する と、そのまま ちからつきて しんで しまいました。  
          その とき、おうじ の しんぞう が かなしみ に たえかねて、はじけて しまいました。  
 「うつくしくない おうじ なんか、とかして しまおう」 
 ところ が ふしぎ な こと に、おうじ の しんぞう だけ は どんな に しても とけませんでした。 
 そこで おうじ の しんぞう は、そば で しんでいた ツバメ と いっしょ に すてられました。 
 そのころ、かみさま と てんし が この まち へ やってきました。 
 「てんし よ。この まち で いちばん うつくしい もの を もって おいで」 
          かみさま に いいつけられて てんし が もってきた のは、おうじ の しんぞう と ツバメ でした。  
         「よく やった。これこそ が、この まち で いちばん うつくしい もの だ。  
 こうして ひとびと を たすける ため に しんだ おうじ と ツバメ は、てんごく で しあわせ に くらした の です。 
 おしまい |  | 
 
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