福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 11月の世界昔話 >ナシ売りと仙人 
      11月21日の世界の昔話 
          
          
         
ナシ売りと仙人 
中国の昔話 → 中国の国情報 
       
      ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先 
      
       
      制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】 
      
       むかしむかし、ある町の道ばたで、一人の男が車につんだナシの実を売っていました。 
「さあ、甘いナシ。おいしいナシ。買ってくださいよ」 
 するとみんなが集まってきて、次々とナシが売れていきます。 
 そこへ、ふと一人のおじいさんがやって来ました。 
 おじいさんはボロボロの着物を着て、肩にかついだクワに小さな包みを一つぶらさげています。 
 ナシ売りのそばまで来ると、おじいさんはていねいにおじぎをして言いました。 
「のどがかわいて、困っています。お願いですから、そのナシを一つくださいませんか」 
 すると、ナシ売りは、 
「ふん! バカな事を言うんじゃない。売り物のナシを、一つだってやれるもんか!」 
 おじいさんは、がっかりです。 
 すると、客の一人がナシ売りに言いました。 
「お金はわたしが払ってやるから、おじいさんにあげておくれよ」 
 するとナシ売りは、一番小さなナシをおじいさんに渡しました。 
「ほらよ」 
 おじいさんはナシを受け取ると、お金を出してくれた人にあいさつをしました。 
「どうも、ありがとうございます。このお礼に、これからわたしがみなさんにおもしろい物を見せましょう」 
 そう言っておじいさんは、ナシの実をムシャムシャと食べました。 
 そして残ったタネを、すぐそばの土の中へうめました。 
「さあ、このタネに水をかけると、すぐ木になって実がなりますよ」 
 それを聞くと、みんなは笑い出しました。 
「このおじいさん、頭が変じゃあないのか? タネをまいて実が出来るまで、何年もかかるというのに」 
 しかしおじいさんはそんな言葉を気にせず、どこからか水の入ったツボを持ってきて、そのツボの水を土の上にふりかけるとこう言いました。 
「天の神さま、土の神さま、タネから芽を出させてください。今すぐに、出させてください」 
 するとみるみるうちに、土の中から芽が出てきて緑の葉が開きました。 
「おおっ!」 
 見ていたみんなは、ビックリです。 
「続いて、花を咲かせます」 
 おじいさんがナシの芽にツボの水をふりかけると、ナシの芽はグングンのびて太い木になりました。 
 そして枝につぼみがいっぱいついたかと思うと、パッ、パッ、パッと、まっ白い花がさきました。 
 やがて花がちってしまうと、そのあとにたくさんの実がなりました。 
「さあ、みなさん、食ベてください」 
 おじいさんはそう言って、ナシの実をもぎ取るとみんなに配りました。 
「ほう、これはうまいなあ」 
「うん、ナシ売りのナシより、十倍はうまいぞ」 
 みんなは、大喜びです。 
「ではみなさん、わたしはこれから遠くへ行くので、このナシの木は持っていきます」 
 おじいさんはクワで土をほってナシの木を引きぬくと、やがてどこかへ行ってしまいました。 
「なんとも不思議なおじいさんだなあ」 
「あれはきっと、仙人だよ」 
「そうだ、仙人にちがいない」 
 みんなが話しているうちに、欲張りのナシ売りは、はずかしそうにコソコソ逃げていきました。 
      おしまい 
         
        関連する記念日紹介 
「7月4日 梨の日」について (366日への旅)より 
  
記念日イメージキャラ 福ちゃん イラスト「ぺんた」 ※無断転載禁止 
         
         
         
        
 
     |