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 8月26日の小話 
 首売り
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 投稿者 「フー」  ピッコロ朗読館
   むかし、本所(ほんじょ→東京都墨田区)のあたりを、「えー、首売りー、首売りー」
 と、よんで歩いている男がいました。
 すると、お屋敷から侍が出てきてたずねました。
 「これ、首売り。お主の首はいくらじゃ?」
 「へい、一両(いちりょう→7万円ほど)でございます」
 「それは安い。わしが買おう」
 侍は首売りを屋敷の中へ入れると、自慢の刀をギラリと抜き、
 「やっ!」
 と、刀を振り下ろしました。
 ところが首売りは、さっと体をひねって刀をよけると、ふところの中から張子(はりこ→木型に紙を重ね貼り、乾いてから型を抜き取って作ったもの)の首を取り出して、侍にポンと投げました。
 「これ! 何だこれは! せっしゃは、お前の首を買ったのじゃ!」
 侍が怒って言うと、首売りは自分の首をポンとたたいて言いました。
 「わたしの首は、かんばん、つまり客寄せでございます」
 ♪ちゃんちゃん(おしまい)
  
 
 
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