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 3月3日の世界の昔話
 
  
 おばあさんと白くま
 カナダの昔話 → カナダの情報
 ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
 投稿者 「すまいるきっき」  すまいるきっき
 
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 投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
 
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 投稿者 「元局アナ佐藤くみこの「優しいおやすみ朗読」
 
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 投稿者 「佐倉サニャ」  Sakura Sagna's VODs
  むかしむかし、ある村に、一人暮らしのおばあさんがいました。ある日、近所のおかみさんが、白い子ぐまを抱いてやって来ました。
 「うちの主人が捕まえて来たのです。よかったら、おばあさんにあげますよ」
 「まあ、なんて可愛い子ぐまでしょう」
 おばあさんは大喜びで、その子ぐまをもらいました。
 子ぐまは子犬の様に、とても可愛い目をしていました。
 おばあさんは子ぐまを、まるで自分の子どもの様に育てました。
 子ぐまはどんどん大きくなって、やがて立派な大人のくまになりました。
 そのくまを見て、近所の男の人が言いました。
 「あのくまに、アザラシを捕らせたらどうだろう。きっと、すごいのを捕ってくると思うよ」
 そこでおばあさんが、くまに尋ねました。
 「どうだい。アザラシを捕りに行くかね?」
 するとくまは、うれしそうにおばあさんの手をなめました。
 「よしよし、それなら行っておいで。でも、けがをしないように気をつけるんだよ」
 おばあさんはそう言って、くまの頭をなでました。
 
 くまは男の人たちと一緒に、雪の降る氷の海へ出かけていきました。
 「いいか、アザラシを見つけたら、風下の方から追うんだぞ。そうしないとお前のにおいに気がついて、アザラシは逃げてしまうからね」
 かしこいくまは言われた様に風下からアザラシに近づき、大きなアザラシを五頭も捕まえました。
 これだけあれば、当分の間は食べ物に困りません。
 それからというもの、男の人たちはアザラシを捕りに行く時は、決まってこのくまを連れて行きました。
 
 ところがある日、くまはよその村人に、鉄砲で撃ち殺されそうになりました。
 それを聞いたおばあさんは心配して、人に飼われているくまだという目印に首輪を作り、くまの首にまきつけてあげました。
 「いいかい、どうな事があっても、決して人を襲ってはいけないよ」
 
 それからしばらくたった頃、どうした事か夕方になってもくまが戻ってきませんでした。
 「どうしたんだろうねえ」
 おばあさんは心配で心配で、じっとしていられません。
 すると夜遅く、くまが知らない男の人をくわえて戻って来ました。
 おばあさんがびっくりして男の人を抱き上げると、男の人はすでに死んでいました。
 「大変だ。うちのくまが死んだ人を連れてきたよ!」
 おばあさんの叫び声を聞いて、近所の人たちが集まってきました。
 「上着がこんなに破けているのは、くまに噛み殺したからだ!」
 「しかし、このくまは自分から人を襲ったりはしない」
 「そうだ。きっと首輪のついているくまなのに、この男がそれを殺そうとしたから、くまが怒って噛み殺したんだ」
 みんなは、口々に言いました。
 みんなが言う様に、死んだ男の人は首輪のついているくまを殺そうとしたのです。
 そして怒った熊が、男の人を噛み殺したのでした。
 おばあさんはくまに抱きつくと、涙を流しながら言いました。
 「お前は、何て事をしたんだい。事情はどうあれ、人を殺したお前とは、もう一緒には暮らせないよ。お前はこれから、人のいない遠いところで暮らすしかないんだよ」
 
 次の朝、おばあさんはすすと油を混ぜてまっ黒の塗料を作ると、それをくまのお腹に塗りました。
 「さあ、お行き」
 首輪をはずしてもらったくまは、何度も何度もおばあさんを振り返りながら遠ざかって行きました。
 
 それから何年かたって、おばあさんは村の若者から、遠い雪原で見つけたくまの話を聞きました。
 「お腹に黒いもようのある、珍しい白くまだった」
 そのとたん、おばあさんは思いました。
 (きっと、あのくまに違いないわ。やっぱり、元気でいてくれたんだね)
 おばあさんは目に涙をためると、遠い北の空をいつまでもながめていました。
 おしまい   
 
 
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