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 2月1日の世界の昔話
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  イラスト 「みずしま薫」
 
 わがままな大男
 ワイルドの童話 → ワイルドの童話の詳細
 
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 制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】
 
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 制作: ユメの本棚
 
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 投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
 
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 投稿者 「ぐっすり眠れる優しいおやすみ朗読」
  むかしむかし、あるところに、広くてきれいな庭(にわ)がありました。子どもたちは、その庭で遊ぶのが大好きです。
 ある日の事、その庭に恐ろしい声が響きました。
 「わしの庭へ、勝手に入るな!」
 長い間いなかった、庭の持ち主が帰って来たのです。
 持ち主は、わがままな大男でした。
 「出て行け! わしの庭はわしだけの物だ!」
 怒鳴られた子どもたちは、大あわてで庭から逃げ出しました。
 「いいな、二度と入ってくるなよ」
 大男は高いへいで庭を囲むと、大きな立て札を立てました。
 《入るな!》
 子どもたちの大好きな遊び場所が、なくなってしまいました。
 「あーぁー、大男の庭は、きれいで楽しかったな。もう遊べないのか・・・」
 子どもたちは冷たくて高いヘいにもたれて、ため息をつくばかりです。
 
 やがて寒い冬が終わって、春がやって来ました。
 けれど大男の庭には、雪が降り積もったままです。
 春になったのに、雪はいつまでたっても溶けません。
 夏になっても、秋になっても、大男の庭には春はやって来ませんでした。
 ずっと、寒い冬のままです。
 「なぜ、いつまでも冬ばかりが続くのだろう?」
 寒さに震えた大男は、ひどい風邪をひいてしまいました。
 
 ある朝、大男はスズメの鳴き声で目を覚ましました。
 「ああ、なんていい声なんだろう。それに暖かだ。・・・うん? 暖か? それになんだ、この声は?」
 大男は飛び起きて、庭を見ました。
 庭には花が咲き乱れ、すっかり春の庭になっていたのです。
 その春の庭で、子どもたちが遊んでいます。
 「大男は、きっとどこかに行ったんだ」
 子どもたちは大男が風邪で寝ているとは知らずに、庭に入り込んだのです。
 「キャハハハハ」
 子どもたちが笑うたびに雪は溶けて、花が開きました。
 「そうか、わかったぞ。子どもが遊ぶから、春も夏も秋もやって来るのだ」
 大男は庭に出ると、木の下にいる小さな子どものところへ行きました。
 みんなが木に登っているのに、その子は小さ過ぎて登れないでいたのです。
 大男は小さな子を抱きあげると、そっと枝に乗せました。
 「ありがとう」
 小さな子はニッコリ微笑むと、大男にキスをしました。
 大男もニッコリ微笑むと、周りにいる子どもたちに言いました。
 「聞いてくれ、子どもたち。たった今から、ここはみんなの庭だ。たくさん遊んでくれ」
 大男はそう言って、高いへいを壊しました。
 その日から子どもたちは毎日やって来て、すっかり優しくなった大男と遊ぶ様になりました。
 けれども、大男にキスしてくれた小さい子が来る事はありませんでした。
 「わしが木の枝に乗せてやった、小さい男の子を連れて来ておくれ。あの子に会いたいんだよ」
 大男は子どもたちに頼みましたが、でも小さい子がどこにいるのか、何という名前なのか、誰も知りません。
 大男は何年も何年も、小さい子を待ち続けました。
 やがて大男は、すっかり年を取りました。
 おじいさんになってしまい、子どもと遊ぶ力もなくなってしまいました。
 
 また、冬になりました。
 大男の庭は、雪と氷に包まれています。
 でも大男は、寒いとも冷たいとも思いません。
 もうすぐ春が来る事を、知っていたからです。
 
 ある朝、目を覚ました大男は、庭を見て叫びました。
 「あの子だ!」
 まっ白い花が咲いている木の下に、あの小さい男の子がいたのです。
 大男は急いで庭に出て行くと、小さな子をしっかりと抱きしめました。
 「来てくれるのを、ずっと待っていたんだよ。ずっとずっと、会いたかった」
 小さい男の子も大男を抱きしめると、ニッコリ笑って言いました。
 「いつかは、あなたの庭で遊ばせてくれてありがとう。今日はぼくが、あなたを連れて行ってあげるよ。天の上にある、ぼくの庭へ」
 そう言って、あの時と同じ様に大男にキスをしました。
 
 タ方、やって来た子どもたちは、死んでいる大男を見つけました。
 白い花に包まれた大男は、幸せそうにニッコリ微笑んでいました。
 おしまい   
 
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