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 7月11日の日本民話 2
 
  
 キツネのさいなん
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  江戸の王子村(おうじむら→いまの北区王子)に、ゆうめいなおいなりさんがありました。おいなりさんには、おおぜいのおまいりの人たちがやってきますので、おみやげ屋も料理屋も、大はんじょうしていました。
 「おれも、王子いなりにおまいりして、ごりやくをさずかろう」
 あるとき、ちょうしのいい男が、王子村へやってきました。
 おいなりさんのちかくのたけやぶをとおりかかると、一ぴきのキツネが、たちまちきれいなむすめにばけて、おいなりさんのほうへあるいていきます。
 おまいりの人をだまして、ごちそうにありつくつもりでしょう。
 男はむすめのあとをつけていって、
 「よう、おたまちゃん。あんたもおまいりかい。いっしょにいこうじゃないか」
 と、なれなれしく、みちづれになりました。
 おまいりがすむと、男はむすめと料理屋にあがりこんで、酒や料理をたのみました。
 「さ、きょうはおれのおごりだ。えんりょなく、やっておくれ」
 男がドンドン酒をすすめると、むすめにばけたキツネは、ついのみすぎて、ねこんでしまいました。
 男はなおも飲み食いしたあげく、おみやげまで買うと、
 「代金は、つれのむすめにあずけてある。いまはねているから、あとでもらってくれ」
 と、いって、さっさとかえってしまいました。
 さて、しばらくたってもむすめがおりてこないので、みせの人がざしきをのぞいてみると、むすめがしっぽを出して、ねているではありませんか。
 「この、ばけギツネめ!」
 みせの人たちにおいまわされて、人にだまされたキツネは、いのちからがら、たけやぶへにげかえりました。
 おしまい         
 
 
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