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 2月2日の日本民話 2
 
  
 庭はきこさじ
 福井県の民話 → 福井県情報
 
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 投稿者 「眠りのねこカフェ」
  むかしむかし、福井県の坂井郡には、『こはな』という、それはそれは可愛らしいお姫さまがいて、お殿さまはとても可愛がっていました。ところがこのお姫さまは、お城の庭掃除の『こさじ』という若者に思いを寄せていました。
 しかし二人は身分が違いすぎた為、まわりの人々に話す事さえ出来ません。
 そうとは知らず、お殿さまは一の家老(かろう)の息子と縁談(えんだん)を決めてしまい、八月十五日に婚礼(こんれい)をあげるまで話を進めてしまいました。
 悩んだ姫は、ついに病気になってしまいました。
 殿さまはびっくりして、大勢の医者に来て見てもらいましたが、誰一人、姫の病気を治せるものがいません。
 日に日に弱ってゆく姫の姿に心を痛めた殿さまは、ついに占い師を呼んでみてもらうことにしました。
 すると占い師は殿さまに、
 「姫さまのご病気は、ころも川のさけを食べさせると治ります」
 と、言いました。
 殿さまはそれを聞いて大喜びし、
 《ころも川のさけをとってきた者を姫の婿とする》
 と、おふれを出しました。
 さっそく十数人の家来たちが、われもわれもと、ころも川に行きましたが、不思議な事にさけは一匹もとれません。
 その翌日も大勢の人が挑戦しましたが、小魚一匹かからず、皆もどって来ました。
 最後に、こさじがとりに行きました。
 こさじは、舟に乗り川の中ほどに来ると、
 ♪きのもきた、けさもきた、ころもがわ
 ♪すそやぶれて、さけあがる
 (来たと着た、鮭と裂けをかけてあります)
 と、歌を一首よむと、たちまち魚が舟の中へ入ってきたのです。
 さて、こさじは喜んで城へさけを届けたのですが、すでに手遅れで、姫はたった今、死んでしまったのでした。
 皆がなげき悲しむなか、こさじはこんな歌をよみました。
 ♪しでやまか、さんずのかわか
 ♪こさずに、おれたら、またもどれ
 (越さずにおれたらと、こさじにほれたらをかけてあります)
 すると驚いた事に、姫はむくりと起き上がると、死の世界から見事戻ってきたのです。
 お殿さまは大喜びです。
 「おおっ、見事見事。よくぞ姫の病を治してくれた」
 身分の違いはありましたが、こさじはお殿さまに気に入られて、二人はめでたく夫婦になったそうです。
 おしまい
   
 
 
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