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 11月29日の日本民話
 
  
 不思議な火鉢
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  むかしむかし、沖縄に、とかしきぺークーという、とんちの名人がいました。
 沖縄は冬でも暖かですが、この年の冬だけは特別に寒くて、誰もが寒さに震えていました。
 しかしぺークーは火ばちを持っているので、この寒さでも平気です。
 
 ある日の事、村のお金持ちの旦那がペークーの家にやって来て、火ばちを見つけました。
 「ほほう。火ばちとは、珍しい物をお持ちですな」
 旦那はしきりに火ばちをながめて、とても欲しそうにしています。
 それを見て、ペークーは考えました。
 (こいつはうまくすると、旦那にたかれるぞ)
 ペークーは、旦那に言いました。
 「よければ、火ばちを差し上げましょうか?」
 「本当ですか?」
 「ええ、もちろんです。ただ、この火ばちは不思議な火ばちで、誰にあげてもじきに戻って来るのですが」
 ペークーは意味ありげに言いましたが、旦那はそれに気づきません。
 「いやー、この寒さに困っていたんだ。それでは、ありがたくいただきますよ」
 旦那が火ばちを持って帰ろうとすると、ぺークーが言いました。
 「旦那。大事な火ばちをあげたのですから、わたしが遊びに行った時には、ごちそうしてくださいよ」
 「もちろんですよ。ごちそうしますから、いつでも遊びに来てください」
 旦那はそう答えると、喜んで帰りました。
 
 さて、ぺークーはその日からさっそく、旦那のお屋敷へ出かけました。
 「おおっ、良く来てくれたね。まあ、ゆっくりしてくれ」
 旦那は約束通り、ペークーをお酒や料理でもてなしました。
 しかしそれから一日に三回、ご飯の時間になるとペークーは旦那のお屋敷へ出かけて行って、飲んだり食べたりするのです。
 これにはさすがの旦那も、困ってしまいました。
 「ペークーのやつ、遠慮もせずに毎日毎日来やがって。
 このままでは、屋敷がつぶされてしまうぞ。
 ・・・もったいないが、火ばちはぺークーに返そう」
 旦那はぺークーの家に、火ばちを返しに行きました。
 するとペークーは、わざとらしく言いました。
 「本当に、この火びちは、誰にあげてもすぐに返ってくるな」
 おしまい   
 
 
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