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11月29日の日本の昔話

おスマばあさん

おスマばあさん

 むかしむかし、ある山奥の村に、おスマばあさんという、おばあさんがいました。
 おスマばあさんは、はやくに死んだおじいさんのお墓をたてようと、欲しい物もがまんしてお金を貯めたのですが、悪い旅の男にだまされてお金を全部持って行かれたのです。
 それ以来、村人はおスマばあさんの事をバカにしていました。

 ある日の事、おスマばあさんのところヘ二人の役人が来ました。
「ばあさん、この村では、自分たちで酒をつくっておるじゃろう」
「どこの家でつくっているか、教えてくれんか」
 この頃、お酒を自分たちでつくる事は禁止されていました。
 でもこの村は貧乏なので、税金の高いお酒を買う事が出来ません。
 そこで村人はこっそり、自分たちでお酒をつくっていたのです。
 役人に聞かれたおスマばあさんは、ゆっくり腰をのばして言いました。
「へえ、旦那(だんな)たちが探しているのは、ささですかい?」
「そうだ」
 役人たちは、うなずきました。
 お酒の事は、「さけ」の「さ」を重ねた言葉の「ささ」とも言います。
「それでしたら、この山の炭焼小屋で、どっさりとつくっておりますだ」
 それを聞いた役人たちは、顔を見合わせてニヤリと笑いました。
(ウッヒヒヒ。今日は、たっぷり酒が飲めるわい。それに、ろうやに放り込むとおどかせば、金も手に入る。・・・これだから、役人はやめられん)
 まったく、悪い役人たちです。
「では、ばあさん。そこヘ、案内してくれんか」
「ああ、いいですが、ちょっと待ってくださいよ。息子が戻って来るまでに飯をたかんといかんから、ちょっと隣で米をかりてくるで」
 そう言っておスマばあさんは隣の家でお米をかりて来ると、役人たちに言いました。
「さあ、案内しますで。しっかりついて来てくださいよ」
 おスマばあさんは先頭に立つと、けわしい山道をすたすたとのぼって行きました。
 おスマばあさんのあとから、役人たちがフウフウ言いながらついて行きます。
「まったく、このばばあ」
「年の割には、足が早いわい」
 そしてやっとの事で、三人は山奥の炭焼小屋に到着しました。
「さあ旦那。ささは、あそこでつくっておりますだ」
「そうか、ばあさんはここで待っていろ」
 役人たちは炭焼小屋の戸を開けると、転がるように中ヘ飛び込みました。
 しかし炭焼小屋の中はクモの巣だらけで、どこを探しても酒のさの字もありません。
 役人たちは腹を立てて、おスマばあさんに文句を言いました。
「ばばあ! どこに酒があるのだ!」
「うそをもうすと、ただではおかんぞ!」
 すると外から、おスマばあさんが役人たちに手招きをしました。
「旦那。そこではなく、こっちでさあ。すぐそこに、ささがどっさりございますよ」
 役人たちが小屋を出ると、おスマばあさんが笹(ささ)やぶを指さしていました。
「どうじゃ、いい笹じゃろ」

 その頃、村ではおマスばあさんの知らせを聞いた村人たちが、村中の酒を隠したあとでした。
 この事があってから村人はおスマばあさんに感謝して、二度とバカにしなかったそうです。

おしまい

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