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 1月13日の日本民話
 
  
 和尚さんの三つの忠告
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 ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
 
 制作 : 果実乃ゐと⁕Kamino Ito⁕
 
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 投稿者 「眠りのねこカフェ」
 
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 投稿者 「天乃悠の朗読アート」   天乃悠の朗読アート
  むかしむかし、あるお寺に、和尚さんと小僧が住んでいました。
 ある日の事、小僧が修行の旅に出る事になり、それを見送りに行った和尚さんが小僧に言いました。
 「小僧よ。途中でどんな事があっても、柱のない家に宿をとるでないぞ」
 (柱のない家? そんな家なんかあるものか)
 小僧はそう思いましたが、
 「はい、分かりました」
 と、返事をして旅立とうとすると、さらに和尚さんが言いました。
 「旅に出て宿をとった時、亭主よりも女房の方が大事にしてくれる家には気をつけるんだぞ」
 「? ・・・はい、分かりました」
 意味がよくわかりませんが、小僧が返事をして旅立とうとすると、また和尚さんが言いました。
 「ネズミと言うやつは年を取ると『こうすい』と言う化け物になって天井裏にひそみ、人を捕って喰うそうだ。
 天井裏がゴソゴソ言ったら、くれぐれも気をつけるんだぞ」
 「はい、分かりました」
 小僧はそう言って、やっとお寺を出て行きました。
 
 小僧が峠道を歩いていると、突然の夕立が降ってきました。
 「大変だ! どこかに雨宿りが出来るところは?」
 小僧が周りを見渡すと崖の土をかき出して作ったほら穴があったので、小僧は雨が止むまでほら穴で雨宿りをする事にしました。
 その時ふと、小僧は和尚さんの言われた事を思い出しました。
 「和尚さんは『柱のない家に宿をとるな』と、言われていたな。このほら穴を家と考えると、ここは柱のない家じゃないか」
 そこで小僧がほら穴から飛び出すと、そのとたんにほら穴の天井が『ズドーン!』
        と崩れ落ちたのです。
 もしも飛び出すのがもう少し遅ければ、小僧は生き埋めになっていたでしょう。
 「和尚さま、ありがとうございます」
 小僧はお寺の方角に手を合わせると、また旅を始めました。
 
 その日の夕暮れ、小僧は一軒の家に泊めてもらう事になりました。
 その家の女房は小僧の為にお風呂をわかしてくれたり、ごちそうを出してくれたりと、とても親切にしてくれます。
 でも亭主は囲炉裏(いろり)にあたっているばかりで、小僧の方を見ようともしません。
 小僧はふと、和尚さんに言われた事を思い出しました。
 「和尚さんは『亭主より女房の方が大事にしてくれる家には気をつけろ』と言っていたが、この家の事かな?」
 そこで小僧は布団に入ると、用心深く辺りを見回しました。
 すると天井の板に丸い穴が開いていて、それが寝ている自分の心臓の真上だと気づいたのです。
 「どうも、不自然な穴だ」
 小僧はふとんの中に枕を入れると人が寝ている様なふくらみを作って、自分は用心の為に部屋のすみで寝ました。
 
 その真夜中の事、その天井の穴から槍が飛び出してきて布団を突き刺したのです。
 この家は旅人を殺して金品を奪う、盗賊の家だったのです。
 命拾いをした小僧はあわてて逃げ出すと、お寺の方角に手を合わせました。
 「和尚さま、ありがとうございます」
 
 次の日、小僧は一軒の古寺を見つけて、そこで一晩を過ごす事にしました。
 「ここなら柱もあるし、亭主も女房もいないから大丈夫だろう」
 小僧が安心して寝ていると、天井裏で何かがゴソゴソとはいずり回り、今にも襲いかかってきそうな気配です。
 小僧はふと、和尚さんに言われた事を思い出しました。
 「和尚さんは『ネズミは年を取ると『こうすい』と言う化け物になって天井裏にひそみ、人を捕って喰う』と言っていたな。
 もしかすると、これが『こうすい』という化け物か?
 もしそうなら、こうすいはネズミが化けた物だから、ネコを怖がるに違いない」
 そこで小僧は、
 ♪ニャーオ
 ♪ニャーオ
 と、ネコの鳴き真似をしました。
 すると天井裏にひそんでいた物は、『チュー!』と悲鳴を上げてどこかへ逃げて行きました。
 「やっぱり、こうすいだった」
 小僧はお寺の方角に手を合わせると、
 「和尚さま、ありがとうございます」
 と、言って、旅を続けました。
 
 こうして和尚さんの言われた言葉で三度も命を救われた小僧は、無事に旅を終えて再びお寺に帰る事が出来たのです。
 おしまい   
 
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