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 6月24日の小話 
 早業   《剣術指南(けんじゅつしなん→剣術を教えること)》と、大きな看板をかかげた家で、弟子の一人が先生に聞きました。
 「先生、この間、むぼうにも試合(しあい)を申し込んだ者がいましたね。先生の事だからむろん、さんざんに打ちのめしてやったのでしょう」
 「うむ。まだまだ下手な奴であった。試合に立ち合うのはやめようと思ったが、ひきょう者などと言われると困るから、仕方なしに立ち合ったわ」
 「ほう、して、どのように立ち合われました? 詳しく教えてください」
 「そうか、ならば教えよう。相手が真一文字にうってくるところを、わしは自慢の早業で・・・」
 「早業で、どうなされました?」
 「素早く、ひたいで受け止めたわ」
 「・・・へっ?」
 弟子がよく見てみると、先生のひたいは青くはれ上がっていました。
 ♪ちゃんちゃん(おしまい)
   
 
 
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