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 2月4日の小話 
 ほどほどに   ある、北風の吹きつける寒い晩の事です。「火の用心、火の用心」
 夜回りがひょうし木を打ち鳴らしながら、表通りを歩いていると、店のご隠居(いんきょ→仕事を引退して、老後生活を楽しんでいる人)さんが、この夜回りを呼び止めて、
 「この寒空の中をご苦労さん。まあ、酒でも飲んで体を温めていくがいい」
 と、親切にも、お酒と湯豆腐をふるまってやりました。
 「これはこれは、ありがたい事です。本当に、ご隠居さまの様なお心優しいお方は、めったにいるものではございません」
 お酒の好き夜回りは、やたらとお世辞を言いながら出された酒を飲み干すと、
 「ぷはーっ。おかげさまで、すっかり体が温まりました。それではあっしは、もう一回りしてきます」
 と、ほろ酔い気分で出て行きました。
 ところが何を思い出したのか、夜回りはすぐに引き返して来て言いました。
 「さっきのお礼に、ご隠居さまのお家だけは大目に見る事にいたします。『火の用心』は、ほどほどで結構でございます」
 ♪ちゃんちゃん(おしまい)
  
 
 
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