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 1月21日の小話 
 尻違い   あるところに、頭の弱い息子がおりました。親父さんがアメをこしらえてかめの中に入れ、高い棚の上にあげておきました。
 
 ある日の事。
 息子がしきりと、
 「ああ、なめたい、なめたい。アメがなめたい」
 と、言うので、親父さんは仕方なく、
 「わかった。今、かめを下ろしてやるから、お前は下にいて受け取るんだぞ」
 「うん。わかったよ」
 親父さんは棚の上に上がって、かめをかかえると、
 「それ、いいか。こっちへ来て、しっかり尻を押さえるんだ」
 すると、下から息子が言いました。
 「ああ、いいよ。しっかり押さえるよ」
 そこで親父さんは、そろそろと手を伸ばしてかめを下ろしました。
 「どうだ? しっかり押さえたか?」
 「押さえたよ」
 息子が言うので、親父さんが安心して手を離すと、
 ガシャーン!
 かめは土間(どま→家の中で、地面のままの場所。主に台所)に落ちて粉々に砕け、アメはみんな流れてしまいました。
 親父さんは、かんかんに怒って言いました。
 「あれほど言ったのに、お前は、どうして尻を押さえていなかったんだ!」
 すると息子は、しっかりと両手で自分の尻を押さえたまま言いました。
 「父ちゃん、見とくれよ。おれはこんなにしっかり尻を押さえていたんだ」
 ♪ちゃんちゃん(おしまい)
   
 
 
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