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 11月25日の日本の昔話
 
  
 すす竹売り
 吉四六(きっちょむ)さん → 吉四六さんについて
 
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 投稿者 ナレーター熊崎友香のぐっすりおやすみ朗読
 
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 投稿者 「眠りのねこカフェ」
 
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 制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】
 
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 投稿者 「癒しの森っ子」
 
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 投稿者 「テツの朗読チャンネル」
 
  むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。
 以前、吉四六さんはキジを売っていると勘違いさせて、カラスを売りつけて大もうけした事がありますが(→おとりのキジ)、これはそれからしばらくたったある日のお話しです。
 
 今度は吉四六さん、町にすす竹を売りにやって来ました。
 「ささや~ぁ、すす竹~ぇ」
 吉四六さんが声を張り上げて町の中を歩いていると、その姿を見た一人の商人が隣の店に飛び込みました。
 「河内屋(かわちや)さん! ちょっと、ちょっと」
 「これはこれは、虎屋(とらや)さん。どうしました?」
 「ほれ、いつか。
 かごの上にキジを乗せて安い値で『カラス、カラス』と言って売りに来た男がいましたね。
 それを見て『きっと、カラスとキジの見分けがつかない田舎者だ』と思って、『カラスをくれ』と言うと、中から本物のカラスを取り出して売りつけたではありませんか」
 「ああ、ありました。覚えていますよ」
 「そう、その男が今、すす竹売りに来たんですよ。
 どうです?
 あの時の腹いせに、うーんと油をしぼってやろうじゃありませんか」
 そう言って虎屋と呼ばれた男は、河内屋にある作戦をささやきました。
 「なるほど、これはおもしろい」
 「でしょう。そら、やって来ましたよ。・・・おい、すす竹売り!」
 虎屋が吉四六さんに、声をかけました。
 すると吉四六さんは、すぐにやって来て、
 「へい、ありがとうございます」
 と、頭を下げました。
 「ささを、一本くれないか。いくらだ?」
 「はい。十文でございます」
 「それ十文だ。とっときな」
 「はい、ありがとうございます」
 「おい、おれには、すす竹一本くれ」
 今度は、河内屋が声をかけました。
 「はい、ただいま」
 吉四六さんが何気なくすす竹を一本渡すと、河内屋はいきなり怒り出しました。
 「おいこら! これは虎屋に売ったのと同じではないか! 虎屋は『ささ』で、おれは『すす竹』と言ったんだ!」
 虎屋も、吉四六さんに詰め寄りました。
 「そうだ! 『ささや、すす竹』と言うからには、違う物でなければならん。
 見れば、みんな同じ物だ。
 お前はかたり(→人をだまして、お金を取ること)だ!
 ふといやろうだ!」
 全くのいちゃもんですが、でも吉四六さんは平気な顔で言いました。
 「これはこれは、誰かと思ったら、虎屋の旦那で」
 「うん、いかにもおれは虎屋だ」
 「お名前は、権兵衛さんで?」
 「ああ、権兵衛だが、それがどうかしたか?」
 「ヘヘへ、そちらさまは、河内屋の久六(きゅうろく)さんで?」
 「そうだ。河内屋が屋号(やごう)で、名が久六だ。さあそれよりも早く、ささでないすす竹を寄こせっ!」
 すると吉四六さんは、腹をかかえて笑い出しました。
 「な、なにを笑う!」
 「いや、実はわたしの売っている竹は、屋号が笹屋で、名前がすす竹と申すのです。
 屋号で呼んでも名前で呼んでも、物はどちらも同じ物ですよ」
 それを聞いた二人の商人は、
 「ちくしょう、またやられたわ!」
 と、言って、おとなしく店の中に帰って行きました。
 おしまい   
 
 
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