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 5月3日の日本の昔話
 
 
  
 地蔵の田植え
 地藏菩薩蒔田
 
 福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
 
 
 むかしむかし、あるところに、とてもよく働く若者が住んでいました。頭擺頭擺,有一隻位所戴個當煞猛做事个後生人。
 
 若者は田へ出かける時、いつも村はずれのお地蔵さまに手を合わせておがみました。
 後生人去田做事个時節,佢總係雙手合十去拜在莊尾个地藏菩薩。
 「わたしや村人たちが元気でいられるのも、全てお地蔵さまのおかげです。ありがとうございます」
 「𠊎摎村民做得身體康健過生活,都係打幫地藏菩薩保佑,承蒙、承蒙。」
 ある日、その若者が病気になりました。
 有一日,這個後生人發病仔了。
 今はちょうど田植えの時期なので、病気だからといって休む事は出来ません。
 今晡日堵堵係蒔田个時節,所以連發病仔乜做毋得歇睏。
 「困ったな。早く田植えをしないといけないのに」
 「無結煞哪,無較遽蒔田做毋得。」
 若者は心の中で、お地蔵さまに頼みました。
 後生人心肝肚求地藏菩薩。
 
 (お地蔵さま、病気を治してください。
 (地藏菩薩,請你醫好𠊎个病,  わたしは、早く働きたいのです。
 𠊎想遽遽去做事。
 働く事ほど、気持ちの良いものはありませんから)
 無麼个比做事心情較好。)
 その晩の事、村人が若者の田のそばを通ると、誰かが田の中で畑仕事をしていました。
 該日暗晡,村民經過後生人个田時節,毋知麼个人在田肚做事。
 村人が、「こんばんは」と、言うと、
 村民摎佢相借問講:「暗安。」時節
 「はい、こんばんは」と、その誰かが答えました。
 該個某人應講:「暗安。」
 
 その誰かは、次の日も若者の田に入って働いていました。
 該個某人、第二日乜去後生人个田肚做事。
 
 別の村人がその誰かに、
 另外一個村民摎該個某人相借問講:
 「こんにちは」と、言うと
 「你好。」時節
 「はい、こんにちは」と、答えました。
 該個某人應講:「你好。」
 その知らない誰かはとても仕事が早くて、一晩と一日で若者の田の田植えを終わらせたのです。
 該個某人手腳當遽,一日一夜就蒔好了。
 それを見て、村人たちはうわさをしました。
 看著个村民傳出風聲。
 「不思議な人だ。どこの誰だろう?」
 「這個生份人。在哪位來个?」
 そのうわさが、殿さまの耳に入りました。
 該風聲傳到城主耳孔。
 殿さまは、その知らない誰かをお城に呼びました。
 城主喊該個某人來城肚。
 「お前は、病気の若者の田植えをしてやったそうだな。
 「聽講你摎發病仔个後生人蒔田係無?
 困っている者を助けるのは、良い事だ。
 幫助有困難个人係好事。
 ほうびに、酒を飲ませよう」
 請你啉酒做為獎勵。」
 
 殿さまはそう言って、お酒を進めました。
 城主恁樣講,繼續勸酒。
 「ありがとうございます」
 「承蒙你。」
 知らない誰かは、おいしそうにお酒を飲みました。
 該個某人啉落像人味道盡好个酒。
 「さあ、もっと飲め」
 「俚再過啉酒。」
 殿さまが進めると、知らない誰かは顔を真っ赤にして手を振りました。
 城主勸酒時節,該個某人面紅紅,擛擛手。
 「もう飲めません。これで、帰ります」
 「𠊎無法度再過啉咧。這下愛轉囉。」
 「まてまて」
 「等下、等下。」
 殿さまは呼び止めると、さかずきを差し出しました。
 城主喊頓恬時節,拿出酒杯。
 
 「このさかずきを、お前にやろう。酒を飲みたくなったら、遠慮なくここへまいれ」
 「這隻酒杯送分你,你想愛啉酒時節,毋使細義,來這位。」
 「はい、ありがとうございます」
 「好,承蒙你。」
 知らない誰かはさかずきを頭に乗せると、フラフラしながら帰っていきました。
 該個某人摎酒杯放在頭那頂,踜踜蹭蹭行等轉。
 この話を聞いた病気の若者は、首をひねって考えました。
 發病仔个後生人聽到這隻故事,頭側側想。
 「家の田植えをしてくれた人って、誰だろう?」
 「摎𠊎蒔禾仔个人會係麼儕?」
 
 いくら考えても、思い当たる人がいません。
 無論仰般想,還係想毋出。
 「まあ、誰だか知らないが、ありがたい事だ。これも、お地蔵さまのおかげに違いない。お礼に行ってこよう」
 「好啦,想毋出係麼儕,但係盡承蒙个事。這乜定著愛感謝地藏菩薩。來去拜佢。」
 若者は起き上がると、お地蔵さまのところへ行きました。
 後生人蹶䟘起來,斯去地藏菩薩該位。
 「お地蔵さま、お久しぶりです。・・・あっ!」
 「地藏菩薩,恁久無看到。...啊!」
 若者は、お地蔵さまを見てびっくりです。
 後生人看到地藏菩薩嗄發痴驚。
 なんとお地蔵さまの頭の上に、さかずきが乗っているではありませんか。
 仰會地藏菩薩頭那頂有一隻酒杯仔呢?
 そればかりではなく、お地蔵さまの足には田んぼの泥がこびりついていたのです。
 毋只恁樣,地藏菩薩个腳膏著田泥。
 若者は、知らない誰かの正体に気づきました。
 後生人發現該個毋識个某人正式身份。
 「お地蔵さま。田植えをしてくださったのは、あなたでしたか。
 「地藏菩薩,摎𠊎𢯭手蒔田个人,係你無?
 
 このさかずきは殿さまからいただいたさかずきで、足の泥は田の土でございましょう。
 這酒杯係城主賞个,腳膏著个泥係田泥,
 
 おかげさまで、今年もお米がとれます。
 好得你,今年正有穀好收成。
 ありがとうございました」
 承蒙你。」
 
 若者はお地蔵さまの足をきれいにすると、お礼にお酒をお供えしました。
 該個後生人摎地藏菩薩个腳洗淨,並奉酒答謝。    註:今でもよく目にするお地蔵さまは、釈迦が死んだあと、みろく仏の出生するまでの間、無仏の世界に住んで人々を救済する神さまの像で、中国では唐代、日本では平安時代より盛んに尊信されています。註:你現下輒常看著个地藏菩薩,係無佛世界肚,在佛陀過身後,人類一直保存到佛陀出世个神像。中國自唐朝、日本自平安時代以來就受到盡多人敬奉。
 「かさじぞう」のように、昔話に出てくるお地蔵さまの多くは、親切にしてくれた人に恩返しをしてくれます
 民間傳說肚講个『戴笠嫲个地藏菩薩』,大體係報答該兜熱心个人。    おしまい煞咧
   
 
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