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 2月20日の日本の昔話
 
  
 火事の知らせ方
 通知人火燒屋个方法
 
 ・日本語 ・日本語&中国語 ・日本語&客家語
 
 福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
 むかしむかし、吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。  頭擺頭擺,有一個安到吉四六先生个人,非常樂線。  ある晩の事です。
 有一暗晡, 
 吉四六さんが、かわや(→トイレ)に起きると、向こうの空がまっ赤に染まっています。
 吉四六先生䟘床去便所个時節,看到對面个天頂滿天紅紅。
 「ややっ、火事かな。どの辺りじゃろ?うん?あの辺りは、もしや!」
 「啊,敢會火燒屋,該係哪位?m24?該片萬一係!」
 どうやら、庄屋(しょうや)さんの屋敷の辺りです。
 仰結煞,係在村長屋下該片析。
 「たっ、大変だー! すぐに、すぐに知らせに行かなくては!」
 「事情大條了!無煞煞來去通知佢做毋得!」  吉四六さんは、かわやを飛び出して裸足で駆け出そうとしましたが、
 吉四六先生在便所衝出去,鞋就無怕著想愛遽遽趕過去,毋過,
 「・・・いや、待てよ」
 「...噯!等一下哦!」
 寝ていたおかみさんを起こして、まず、お湯をわかしてもらって、ていねいにひげを剃りました。
 佢先去喊餔娘䟘床後,先煮鑊滾水,慢慢剃鬚,
 それから大事な時に着る「かみしも」を着て、たびをはいて、せんすを手にして、ゆうゆうと落ち着いて庄屋さんの屋敷へ出かけました。
 續等換著重大事情正會著个歸套武士禮服,袜仔著好,手拿扇仔撥阿撥,定定行去村長屋下。
 火事は、庄屋さんの屋敷のはなれでした。
 遰火燒个係村長屋下个橫屋,
 まだ、誰も気がついていません。
 吂有人注意到。
 「庄屋さん、庄屋さん。はなれが火事でございますよー」
 「村長大人,村長大人。橫屋遰火燒囉。」  吉四六さんは、雨戸を静かに叩いて庄屋さんを呼び起こしました。
 吉四六先生恬恬仔搉窗門枋,喊村長䟘床。
 声が小さかったし、戸の叩き方もおとなしかったので、庄屋さんはなかなか目を覚ましません。
 細細聲仔,搉窗門枋又恁細力,村長先生全無喊醒。  「庄屋さん、庄屋さん。はなれが火事でございますよー。早く消さないと、大変な事になりますよー」
 「村長大人,村長大人,橫屋遰火燒了,無煞兜搣烏忒佢,斯無結煞哦!」  「・・・・・・」
 「......」  しばらくたってから、
 過一下仔,   「なに、火事じゃと!」
 「麽个啊,火燒屋!」
 庄屋さんがやっと起きて戸を開けると、はなれはもう、ほとんど焼けてしまった後でした。
 村長大人煞煞跳起來,打開門來看,橫屋早仔燒淨淨了。
 次の朝、庄屋さんはカンカンに怒って、吉四六さんの家にやって来ました。
 第二日朝晨,村長大人閼到跳起來,走去吉四六先生屋下。
 「お前は夕べ、火事だというのに、なぜ、かみしもなどつけてゆっくり来た。
 「你臨暗仔,火燒屋个時節仰會著盡派頭,著等武士禮服慢慢來通知呢?
 しかも、あんなおとなしい知らせ方だ。
 還有用恁細聲喊𠊎!
 おかげで、はなれを丸焼けにしてしまったではないか。
 因為你,該橫屋燒淨淨了毋係嘎?
 火事の時は、何をさておいても駆けつけて、大きな声や物音で知らせねばだめだ!」
 火燒屋个時節,麽个事就愛放忒趕過來,大大聲無斯用打銅鑼來通知人正做得!」
 
 と、きつい文句を言いました。
 用嚴厲个話來駡佢。  「へい、次からは、そうしましょう。・・・けど庄屋さんは、いつも、『男はいざという時は落ち着いて、身なりもきちんとせよ』と、言っていたではありませんか」
 「hei,下二擺定着照你講个來做。...毋過,村長大人常透講:『細倈仔人緊急个時節愛定定來,打扮萋頭兜仔』有無?」  「それも、時と場合じゃ!そのくらいの事をわきまえないで、どうする!」
 「該乜愛看時節摎場合,像該恁大仔个事情又分毋清楚,愛做麽个大頭路?」
 「・・・へい」
 「...hei」
 せっかく火事を知らせてあげたのに、こんなに文句を言われては面白くありません。
 總係通知你火燒屋了,還分佢駡盡無生趣。
 さて、それからいく日かたった、ある晩の事。
 過幾日有一暗晡, 
 吉四六さんは真夜中に跳ね起きると、丸太をかついで庄屋さんの屋敷に駆けつけました。
 吉四六先生睡到半夜跳䟘起來,擎等樹筒去村長屋下, 
 そして、丸太を力一杯振り上げて、
 大大力擎起來, 
 ドンドン! ドンドン!
 dondon!dondon!滾
 と、雨戸を叩いて大声で言いました。
 撞佢个窗門枋,大聲喊:
 「火事だ! 火事だ! 火事だー!」
 「火燒屋哦!火燒屋哦!火燒屋哦!」
 びっくりした庄屋さんは、あわてて飛び起きました。
 著驚著个村長大人,煞煞跳䟘起來,
 そして雨戸を開けると、吉四六さんがいます。
 打開窗門枋看到吉四六。  「火事はどこだ! おいおい、そんなに叩くな。屋敷が壊れるではないか」
 「哪位遰火燒!噯噯,恁大力撞毋驚摎屋撞壞忒係無?」
 すると吉四六さんは、丸太を放り出して、
 吉四六先生斯放下樹筒,
 「ああ、くたびれた。どうです。本当に火事があった時には、今くらいの知らせ方で、いかがでしょうか?」
 「啊,還悿哦。仰般,正經火燒屋个時節,用頭下恁樣个通知法做得無?」
 と、言ったそうです。
 問講:    おしまい  煞了  
 
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